哲学者 國分功一郎さんと社会学者 古市憲寿さんの対談『社会の抜け道』を読了。
先週参加した社会学者 大澤真幸さんと國分功一郎さんのご登壇イベント
に合わせ(サイン用に)入手していた一冊。
「(國分功一郎さんの著書の中で)どれにしようかな」と検索した後、著書名に興味を持った次第。
なお、その著書名は、國分功一郎さんが担当された「あとがき」から引用すると
” 社会を矛盾によって定義することはできない。社会というのは常に水漏れを起こしている。社会の中にまずあるのは水漏れである・・・。”(p251)
帯には
” あらゆる社会問題は「解決」しない。けれど、必ず「抜け道」歯ある “
とあり、本書は
第一章 IKEAとコストコに行ってみた
第二章 「暮らしの実験室」の幸福論
第三章 デモと遊びと民主主義のアップデートされた関係性
第四章 人類史的重要プロジェクト 保育園の話
第五章 理想社会と食の問題
第六章 僕たちの「反革命」
なる目次立てのもと、さまざま問題点の抽出に、整備が行き届いていない制度の欠陥に、あるべき姿などが議論されています。
(上記の)並んだ章の中で、商業施設(ショッピングセンター)、消費から派生して語られている部分
” 國分 日本は「大人」を目指してきたんだろうけれど、俺は日本には「老人」が向いているんじゃないかと思う。
「これが大切だ」という価値が内面化されていて、みんながそれを大事にしている社会。その中で、経済成長を闇雲に目指すのではなく、毎日そこそこに暮らしていく。”(p43)
や
” 古市 同世代の消費意識を見てると、この単純なルールが揺らいでいるように見えます。例えば、もの買うことに快楽を感じるんじゃなくて、人とつながるためにものを買う傾向が強まっている気がします。
自分を高めるためにブランド品は買わないけれど、誰かとつながるために通信費は払う。CDは買わないけれど、夏フェスへ行くとかもそうですよね。”(p57)
といった考察も興味深かったですが、
意外と古市憲寿さんが、國分功一郎さんに(シングルファーザー時の)子育てと仕事の両立に関して問われ
” 本当に自分ができることだったら、あんまり時間がなくてもできるからね。”(p187)
或いは
” いわゆる「自分探し」で旅に出ちゃったりするのはどうかと思うけど、自分がどういうものに向いているか、何を楽しいと思いえるかとか、そういうことはきちんと発見していけるといいと思うな。”(p224)
と、こちら側(=社会と繋がる自分自身)の在り方について言及されている部分が、印象として残されました。
議論を通じて浮かび上がった問題と代替策と
本購入時は、2013年10月に出版された本で、現在(2018年12月時点)とのギャップが気になりましたが、
読み始めてみると違和感を抱くような部分はなく、今も横たわる問題の数々として、お二人の議論の進行のところどころを興味深く読めました。