建築家 光嶋裕介さんが2019年、銀座蔦屋書店で行った対談がまとめられた『つくるをひらく』を読了。
対談の相手(登場順/敬称略)は、
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION Vo. & G)
内田樹(神戸女学院大学名誉教授)
いとうせいこう(作家、クリエイター)
束芋(現代美術家)
鈴木理策(写真家)
の五名。
ふら〜っと立ち寄った書店で、短い期間に(本書)サイン本がラスト1冊で販売されていた状況に、
胸がときめき、手元に引き寄せていた著書。
前夜+対談+余韻 = 学び
本書は各対談に前後して、
” なんだか真ん中気質の親近感のせいか、遠い親戚と再会する気分である。”(p126)
といった対談前に寄せる思いに、
” 理策さんと話していると、自分のなかの世界をつくるうえにおいて「見る」ことがいかに決定的であるかを再認識させられた。”(p190)
といった後日談が記載されていることが特徴的で、特に後日談に相当する「余韻」は、
応酬が高度で、ふわふわとして掴めた感じを容易く得られなかった際などに、
” はじまりには「わからない」という挑戦があり、深く追求する知的好奇心がエンジンとなってドライブする。
故にひとは、わかりやすさを手放すと考え続けられるのだろう。そこから無時間という楽しいフロー体験に突入し、なにかを絞り出すようにして創作するから、喜びが循環する。
なにかをずっとつくり続けることができるということは、自分自身がどんどん複雑化していくことに等しいのだ。”(p119)
といった具合、光嶋裕介さんの解釈なり、まとめが綴られていて理解を 助け/深め てくれます。
「つくるをひらく」の確信
また、本の終章(つくりながら生きる道 〜 対話を終えて思うこと)には、本のタイトルとなった『つくるをひらく』に関して
“この「つくる」を実践するためには、頭で考える意識に頼りすぎないで、身体で考える無意識に主導権を譲ること。それが、つくるを「ひらく」ことの第一歩に思えてならない。”(p212)
に、
” つくるをひらくことで、思わぬかたちで光が見えてくる。その小さな光に導かれるように、謙虚な姿勢で、ゴキゲンに情熱を込めてつくり続けること。
ときに痛みを伴うことがあっても、身体感覚に耳をすませ、決して変化を恐れず、自分がいつも変わり続けることが、ひいては、動き続ける不確かな世界のなかで明るく生きる智慧と活力を高めてくれることだと信じている。”(p215)
と要諦が簡潔に記されており、
そこに至る思考のプロセスも興味深かったですが、各分野で秀でた方々とのダイアローグから光嶋裕介さんのフィルターを通じてさまざま示唆を与えられる対談集でありました〜