黒沢咲プロがリアルに描いた麻雀プロ半生記:『渚のリーチ』読了

日本プロ麻雀連盟プロ雀士 黒沢咲プロの『渚のリーチ』読了。

麻雀は遠く昔、役を覚えられず落ちこぼれたものの・・ 近年 Mリーグ発足後の盛り上がりに、

本書サイン本が飛ぶように売れていく様に、「大丈夫かなぁ、、」の思いはありながらも、

再度巡ってきたサイン本購入機を捕まえ↙️

一度スルーしたサイン本購入機 再び  出典:三省堂書店有楽町店 Twitter

購入。

リアルさ滲むストーリー

読み始め早々、記載が「(妙に)リアルだなぁ」と思い、半生を小説仕立てにしたものと判断し読み進めていましたが、実際、

” えええっ、麻雀プロが自分をモデルにした小説を書く!?”(p201)

” 麻雀は「小説より奇なり」な展開が頻発するため対局内容をゼロからつくりにくい」という矢島さんの意図を受け、物語に登場する対局はすべて私が過去に実際に打ったものを用いた。”(p203/註:矢島さん=編集者)

という出版企画時の初期設定に、

” なかなか思うように進まないこともあり、橘さんに多大なるお力を借りながら、一年、二年と時間をかけてつくっていった。しかし、そのおかげで、次々に起きたリアルなドラマを小説にたくさん盛り込むことができたのは、結果的にラッキーだったかもしれない。”(p203/橘さん=作家 橘ももさん)

といった「あとがき」での振り返りに、「やっぱりぃ」と思わせられたのと同時に、

小説執筆依頼を受けてから

” 二千人以上からたったの二十一人。Mリーグの初代メンバーに選ばれる可能性は限りなく低いと思っていたけれど、 “(p137)

という超狭き門を選抜されたMリーグドラフト会議での指名劇に象徴される目まぐるしく変わっていった現実に凄みを。

黒沢咲プロ自身も、

” ー 私の麻雀は、この小説を書いたことで成長したのではないか。

普段から悩んだり、なかなか吹っ切れなかった迷いや葛藤を文字にすることで、自分が進むべき道がよりハッキリ見えてきたのではないかと。”(p203)

という総括されており、話しが

” 秒速で、恋に落ちた。

大学二年生、理工学部だった私のクラスメイトは男子ばかりだった。授業が休講になり、時間つぶしに連れて行かれた雀荘で、私は恋に落ちてしまった。・・中略・・

四角い卓を囲んで牌をそろえていくあのゲーム ー そう麻雀に。”(p5)

の一文に始まる本書は、麻雀との出会いに、会社員生活をしながらも続けていった麻雀に、

” 「勝つための運気を呼び込むこと。それが備わっている人はプロになれます。”(p52)

と麻雀界のビッグネームを含め周囲に勧められる形でのプロテスト受験〜合格、

そしてしばらく会社員として両立を続け

” 麻雀プロになってもそれだけで食べていける人はごくわずか。私はサラリーマン雀士として注目してもらえていたけれど、それはそれなりに世に出る仕事をもらえていたからで、そもそも平日の会社勤めと両立している人は大勢いる。”(p109)

という現実から訣別し

” 失敗を恐れて、易きに流れたくない。人と違っていても、不安に押しつぶされそうになっても、歯を食いしばって私が美しいと思う生き方を選びたい。 “(p131)

とプロに専念、既述のMリーグドラフト会議指名を受け、ストーリーのクライマックスへ・・ という(脚色を含む)半世記。

勝負師語録としての楽しみも

麻雀への理解があるほど、より深くストーリーに入り込めるでしょうが、「あとがき」に

” もし麻雀を打ったことのない方がこの本を手に取って、少しでも興味を持ってくれたとしたら、そしてそれまでのイメージがちょっとでもいいほうに変わったとしたら、それは私が初めてできた麻雀への恩返しになるのではないだろうか。”(p204)

と、私のような門前の人たちも念頭に置かれている様子から、

購入本に書かれていたサイン+落款

一人の女性 の半生/成長記といった形でも読め進められる内容となっており、

” ー  人は、自信がないときほど多数派の選択に流れる。自分がどうしたいかよりも、誰にも責められない道を選ぶんです。”(p131)

といった人生訓が随所に飛び出し、その昔『ここ一番に強くなる阿佐田哲也勝負語録』の記載内容に存分に惹き込まれた者としては、そういった物言いにも読み応えを得られた作品でありました〜


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