京極夏彦さんが10代限定特別講座で語った、この世を生きやすくするための言葉と知恵:『文庫版 地獄の楽しみ方』読了

京極夏彦さんの『文庫版 地獄の楽しみ方』を読了。

先月(2022年10月)開催された神保町ブックフェスティバルで本書購入後、サインを頂いていた経緯。

『地獄の楽しみ方』にサインされる京極夏彦さん

ということで中身を確認せず購入しており、タイトルのインパクトから橘玲さんのような現実に発生している事象をデータ等から説明され、それをカウンターしていく術の示唆かとも思いきや

2019年7月に講談社で一般公募50名(15〜19歳)50名に開催された特別授業(京極夏彦 10代限定特別講座「たたかわないために〜語彙と思考」)の内容が掲載されたもの。

 第1部 言葉の罠にはまらないために

 第2部 地獄を楽しむために

 京極さんとの言葉をめぐる一問一答

の3部構成で

第1部では

” 全ての言葉は多くを捨てて成り立っています。単純化するからこそ整理整頓ができるんです。言葉というのは、世の中をザクザク切って、切り捨てて、単純化してでき上がっています。”(p22)

そこから

” あなたの書いた文章は、あなたの思うとおりに受け取られることは、まずありません。”(p53)

” 聞くほうは勝手に補完しちゃうんです。だって、いろいろ欠けているんですからそこを埋めなきゃわからないでしょう。欠けているところを埋めるのは聞くほうなんです。”(p27)

と作品で確たる世界観を築かれている京極夏彦さんの言葉からコミュニケーションに至る領域の考察に、

第2部では、第1部末尾で

” この世の中は地獄です。その地獄を楽しむために、非常にリスキーな大発明、言葉を利用してみましょうというお話を、”(p80)

という振りから

” 夢は、寝ている時に見ればいいんです。「夢」という字は、「くらい」とも読むのです。夢の真ん中の部分は「目」です。上は「草」で、下は「月」。薄暗くてよく見えない夜に見るのが夢です。

手の届く目標をかかげ、それを達成していくのはすばらしいことです。その目標を「夢」としてしまうことは、夢の矮小化にほかなりません。それ、達成した段階で行き止まりですよ。”(p102)

に、

” 嫌なことをしないためにどんなミッションを自分に課すか、それがクリアできるか。これが楽しめるなら当面困りませんね。世の中は、嫌なことでいっぱいの地獄ですから。これも地獄の楽しみ方の一つです。”(p115)

といった具合に論が展開されていきます。

京極夏彦さんに頂いたサイン

現在地からの突破口

意外にも京極夏彦さんにとって

” ちなみに僕は小説を書くのが大嫌いです(笑)。”(p113)

とあり、経験を通じて得られたお話しに、抜粋した箇所がごく部分的で話題は文章術に読書の効用など対象は多岐に及び、約140ページから読み手が関心を抱いている分野でヒントを得られる内容を見つけられる書であるものと。


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