歯黒べったり
礒撫
波山
鬼熊
恙虫
出世螺
と六篇収録されているうちの三篇を読み終えたので、そこまでのおさらい。
ふと何かの機会、京極夏彦さんのサインを見て、筆跡に魅了されて程なく、
サイン本販売機会に直面、最後の一冊を確保出来たことで入手していた著書。
未知なる京極小説の世界観
名前は頭に入っていたものの初の京極夏彦さん本で、帯に
「江戸末期の遠野で「化け物退治」が繰り広げられる。」
とあり、怪談を想定しての読み始め。
“「何を申すか宇夫方。何故菓子屋が拙者を止める。何の関わりもなかろう。あの愛宕山麓の化け物が、山田屋の縁者だとでも言い出すのではあるまいな」”(四九頁「歯黒べったり」)
或いは、
” 与力の一人の話では、それでは鯱でも鱶でもなく礒撫というものだ、ということだった。
礒撫は西海に住む大魚で、尾には鉄針の如き太く硬い刺が逆さに生えているのだそうだ。
その刺で人を引っ掛けて海中に落とし、然る後に喰うと謂われるものだそうである。”(一五八頁「礒撫」)
など、(盛岡藩)遠野での人々を巡る奇々怪々に、化け物、妖怪が絡み、各話の後半で紐解きが成されていきます。
時代背景に、用いられている語彙から文意、情景が捉えづらい感覚もありながら、文は平易に分かりやすく
当初は全五九〇頁の厚みに腰が引けていましたが、スムーズに読み進められており、今まで感じたことのない世界観、残り三話の展開にも興味津々です。