万城目学さんの『六月のぶりぶりぎっちょう』を読了。
(2024年)七夕に開催された本書刊行記念サイン会で入手していた著書。
収録されているのは
三月の局騒ぎ
六月のぶりぶりぎっちょう
の二篇。帯に目をやると
> 直木賞受賞シリーズ第2弾
とあり、昨秋(2023年11月)、シリーズ第1弾にして
直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』を読んでいたことから期待感を。
一話目の「三月の局騒ぎ 」は、60ページ強の長さで女子大生が集う寮で
” 野分ちゃんも無邪気にけしかけてくるが、知らないから言えるのだ。あの尋常ではない声のかけにくさ、放っておけオーラの圧のすさまじさを。”(p43)
という素性知れぬお局様と主人公が同部屋になったことに端を発したことから繰り広げられるミステリーに、
タイトルになった「六月のぶりぶりぎっちょう」は
” 自分は「羽柴」だと言って聞かないトーキチロー。
「蘭奢堂」の店員だった「丹羽」さん。
居酒屋「うつけ者」大将は「柴田」さん。
髪の毛が豊かになったトクさんは、「徳川」さん。
銀髪を後ろで結ぶ、渋みのある男性は「明智」さんで、ソフィーは自分を「フロイス」と呼び、そして、スイートルームで倒れていた人物の名前は「織田」。
「みんな『関係者』だ・・・」
六月二日の早朝に「織田」が殺され、この場にいるのは「羽柴」「丹羽」「柴田」「徳川」「明智」「フロイス」ー 。
「ここで『本能寺の変』が再現されている、ってこと・・・?」”(p149-p150)
京都観光から一転、ホテルで繰り広げられる本能寺の変が絡んだ!?ミステリー仕立ての展開に・・
六月のぶりぶりぎっちょう は一読しただけで全貌を把握することは困難でしたが、
現実に虚構が入り混じってくる マキメ・ワールド(by 帯裏面)の引力強く、個人的な最も刺さったのが
” ゼロ年代初期、雨後の筍の如くに発生したユニークな個人サイトの多くがすでに消滅していることを。作成者から忘れられ、さらにプロバイダーが消滅し、デジタルの海の藻屑となって散っていった何百、何千ものサイトたち。誰も記録に残さず、誰かの頭の中にのみ記憶として刻まれ、もしも、誰かが記憶を置き去りにしたときは、存在自体あとかたもなく失われてしまう、名もなき創作物たち ー 。”(p63)
なる件。
同時期にホームページ(Webサイト)を立ち上げ、掲示板にどっぷりハマった経験を持つものとしてはストーリーのディテールに多分に共感されられました ^^