今シーズンから東京ヤクルトスワローズにヘッドコーチとして復帰された宮本慎也さんの著書
『洞察力 弱者が強者に勝つ70の極意』を読了。
サイン本販売の情報を検索し、
最後の一冊を入手したことが出来た縁で読むことになった一冊。
内容は『週間ダイヤモンド』の連載の中から抜粋、大幅加筆されたもので、
第1章 一流 一流と二流を分けるもの
第2章 プロ プロフェッショナルの仕事とは
第3章 変化 変化を続けられた者だけが生き残る
第4章 成長 成長する人、しない人の小さな違い
第5章 役割 自分の役割を見つけ、果たす
第6章 指導 結果を出す指導者の役割
第7章 組織 勝つ組織の必然性
の7章立てで構成。
本編では、PL学園の先輩 (元 中日ドラゴンズ)立浪和義さんの気配りを例に、
” 他校の監督さんが練習を見学に来たときである。「(風呂場に)バスタオルを用意しておいてくれ」と言われた立浪さんは
洗面器にシャンプー、リンス、洗顔料を入れて、体を洗うタオル、バスタオルと一緒に並べて置いていた。
風呂場には部員用のシャンプー、リンスが常備してあるにもかかわらずである。これには見学に来た監督がいたく感動したという。
これを16歳、17歳の高校生が平然とやる。そこに立浪さんのすごさがあると思う。普通の高校生は立浪さんが何をやっているのかにも気付かなかった。監督に指摘されて初めてすごいことなのだと思ったのである。
スコアブックを渡すときには、使うページを開いて渡す。玄関にスリッパを並べるときは段差のぎりぎりにそろえてしまうと履きにくいので、少しだけ前に間を開けて並べていた。
野球でも局面が見えていた。周囲を見渡せる余裕があるから、一手先を読むことができる。プレーでの大胆さや繊細さにもつながる。
私の身長は176センチメートル、プロ野球選手の中では小さい方だったが、立浪さんは173センチメートルと私よりも小柄だった。それでもあれだけの活躍をされたのには、理由があるのだ。”(p21-22)
といった一流たる由縁の紐解きに、或いは
” 一見無駄に見えることが、必ずしも無益だとは限らない。失敗を重ねる中で、当時の考え方は正しくなかったのだと反省したり、アプローチの仕方を変えてみようという新しい発想が生まれることもある。
結局は無駄なことを経験してきたからこそ、次からは無駄を省けるようになる。無駄なことが、無駄だと気付くことができる。
無駄を重ねることが、本当の力を身に付けることにつながると思うのである。”(p124)
といった具合。本を開いたところの「はじめに」で宮本慎也さんが、
” 自己分析が何よりも重要なのは、一般社会でも同じだろう。どんな人間でも自分がかわいく、実際よりも高く自己評価してしまう。
それでは自分の役割を正しく理解することはできない。一方で自己評価が謙虚過ぎれば、実際の能力よりも低いところから始めなければならず、力を発揮することはできない。
脇役だった私が長く現役を続けられたのは、相手を知り、自分を知ることに徹したからである。少しでも情報を得ようと、洞察することに努めてきたからともいえる。
本書のタイトルを「洞察力」とした。一般社会でも活用できるテーマを意識して書いたつもりだが、私は野球一筋の人間なので、野球を通してでしか語れない。
本書を手に取られた方々が自らの立場や経験に置き換え、何かのヒントを得ていただけたなら、これほどうれしいことはないと思っている。”(p7)
と出版の経緯、読者へのメッセージを寄せられており、自分を知り、自分を活かすヒントが、70の斬り口で綴られています。
名手たる手綱さばき
宮本慎也さんの著書は
2014年秋以来。今回は移動時間が長かった日との巡り合わせで、246ページを一気に(一日で)読了まで持ち込みました。
自身にも他人にも厳しさを求められる(と称される)宮本慎也さんですが、その底辺には自分自身、他人の長所短所を見極める観察力、洞察力あってのことと本書を通じてよく理解出来ました。
指導者として、また新たな局面で才能が発揮されていくことになりますが、昨年(2017年)、どん底に甘んじた東京ヤクルトスワローズの戦いぶり、変貌にも興味を掻き立てられました。