プロフィールに私小説手法で庶民史を描くことをライフワークとしている本橋信宏さんの『出禁の男 テリー伊藤伝』を読み始めてから全16章+エピローグとあるうちの
プロローグ
第1章 斜視
第2章 運不運
第3章 スタートは制作会社の AD
第4章 ディレクターデビューは雨傘番組
まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
昨年、本書の出版(2021年8月)を知ってから注目していて、サイン本は一旦(貰えるかどうか)保留にして、「そろそろ」と手が伸びた著書。
テリー伊藤さんをよく知る人たちの間で
” テリー伊藤は視聴者を面白がらせるには手段を選ばない。あの人ほど、視聴者を楽しませることに全力を傾ける人はいない、と人々は証言する。”(p4)
という一方、
” ある大物テレビ関係者が「話の出所が自分だとわかるとまずいので今回は協力したくない」と取材を受けてもらえなかったように、テリー伊藤の評伝を語ることは危険案件だった。”(p8)
と本編突入前の プロローグ で早くも極端に針が振れるかの展開を予感させられるところからスタート。
序盤は、
” 一九六八年九月十一日。・・中略・・
伊藤青年はいつものようないデモ隊の最前列に立ち、アジ演説をしてジグザグデモに移ると、隊列を組んだ機動隊が殺気だって向かってきた。「検挙!」
・・中略・・
「全員逮捕! 全員逮捕!」
機動隊指揮官が叫ぶ。伊藤青年は走った。
すると、突然顔面に味わったことのない絶望的な痛みが走った。”(p30)
と、テリー伊藤さんの視力を奪ってしまうほどの痛ましい出来事から
” 他の学生たちは進路を決めたというのに、伊藤青年はいまだに決まっていなかった。
みかねた両親は手に職をつけさせたほうがいいだろうと、息子に寿司職人を勧めた。”(p45)
と、当初はファッション業界を志すも、実家が有名な築地玉子焼き屋丸武であった縁から寿司職人の道を志すも適性を見出せず、
” 社会人失格のらく印を押された伊藤輝夫は、どこに行く。”(p51)
と突きつけられた現実から人の縁で
” 「テレビの仕事で、なにをやりたいんだ?」
・・中略・・
「フロアにいるディレクターだったらできるかもわかんないです」
「じゃあ、わかった」”(p56)
といったやり取りを経てTV業界に進出。
“「大きな海原で海賊になれ!」
斉藤寿孝がIVSテレビ制作を立ち上げ、まだ社員が数名しかいないときに宣言した。”(p64)
と引き寄せた舞台で
” 伊藤輝夫の交渉力はADたちのなかでも群を抜いていた。”(p72)
と、早々に難航しがちなロケ地選定などで才覚を発揮し、
” 伊藤輝夫が初めてディレクターとして「キュー」を出すことになったのは、この雨傘番組にまつわるものだった。”(p76)
頭角の一端を現していくまで。
TV画面向こう側での刺激伴う回顧録
なお、タイトルにある出禁とは、
” 現場は過酷だった。コンプライアンス最優先のいまとなっては、伊藤班は存在そのものが成立しないだろう。
大学、政党、テレビ局、編集スタジオ、寺院。撮影後、出入り禁止になったロケ現場がいくつもあった。”(p4)
との事実に即したもの。
読み始める前は約400ページの厚みに相応の読書期間を想定していましがた、読み始め初日で、p94まで全体の4分の1に到達。
TV 史に演出の世界で名を刻むことになり、私自身の実体験がある番組の数々を手掛けられた痛快人物伝といった趣きで、これから更に面白さが本格化するであろうと内容が楽しみです ^^