先週末、読み始め記 ↓
をアップロードしていた本橋信宏さんの『出禁の男 テリー伊藤伝』を読了。
読了へ向け読み進めたのは
第5章 正月特番で最低視聴率、日テレ出禁
第6章 東大生の血をたこ八郎に輸血する実験で出禁
第7章 「おれ、テレビ界に革命起こしてみせますから」
第8章 『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』
第9章 やしろ食堂のX JAPAN
第10章 土屋敏男とガンジーオセロ
第11章 プロデューサーとの乱闘で出禁寸前
第12章 不肖の弟子と再会
第13章 ねるとん紅鯨団
第14章 浅草橋ヤング洋品店
第15章 江頭2:50のグランブルー
第16章 日本共産党から出禁
エピローグ 斜視との別れ
あとがき
といった12章+α。
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』が伝説たり得たワケ
タイトルに絡んで「出禁」の二文字が記された章が目立ちますが、比重としては
” 「長尾さん、おれ、テレビ界に革命おこしてみせますから」”(p167)
と所属する制作会社社長に決意を示してスタートした『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に分量が割かれています。
” オンエアされるまではどんな手を使ってでもいいものにすること。それが伊藤班の掟だった。”(p187)
及び
” 伊藤班のADたちは常にスーパーマン並みのことを要求された。伊藤班にはノーと言ったことがなかった。”(p198)
更には
” 毎週八名がロケに向かうが、出来がわるいと翌週はずされる。”(p185)
と厳しい環境下、
” テリー伊藤の口から「くっだらねえなあ」「アッタマ、わるいなあ」という言葉が出てきたら合格だ。皆、胸をなで下ろす。その一方で ー 。”(p306)
を経て
” 撮ってきたVTRがテリー伊藤の厳しい演出眼をくぐり抜けたら、次にはビートたけしの最終判断が控えている。
お笑いに関して妥協を許さない二人の選択眼を通過してやっと日曜日夜八時に放送される。”(p185)
という緊張感滲む舞台裏、『進め!電波少年』でTプロデューサーと名を馳せた土屋敏男さんを含む当事者達が振り返る回顧録に、
“「正月特番が大問題になって、大騒ぎになってやっと一回決着したんだけど、その後も伊藤ちゃんが割と乱暴な発想を言うもんだから、多少ギクシャクになってきて。
斉藤(寿孝)社長が伊藤ちゃんに、『もう独立したらどうだ?』みたいなことを言って、ロコモーションで独立していくようなことになっていったんですね。”(p318)
と転機が訪れての
” 花形番組から降りた男は、新たなヒット番組をつくることが最優先課題になった。”(p320)
という状況から始まった『浅草橋ヤング洋品店』。そこで飛び出した
” 生きていたいという江頭と、死に場所をやっと見つけた江頭がせめぎ合う。”(p361)
とバラエティの域はゆうに飛び越えて生死をも行き交った人間ドラマに、
或いは
” テリー伊藤はテレビだけではなく今度は出版業界にまで革命をもたらした。
難解で無機質な対象ほど笑える、という手法をはっきり形にしてみせた。
以後、出版界は「お笑い」と言う切り口が流行するまでにいたった。”(p369)
とTVディレクターとしての枠にとどまらなかった才覚に、約400ページにテリー伊藤さんの半生が、近しい人たちの記憶から浮かび上がる内容。
最初と最後はテリー伊藤さんの斜視にクローズアップし、内面を浮き彫りにしたかの構成も印象的。
今なお語り継がれるワケ
ダンカンさんの↓
を読んだ時にも似たようなことを感じましたが、今も語り継がれる番組の裏側に、尋常ならざる熱量を傾注した人たちの思いが十二分に。
本書は番組にとどまる内容ではありませんが、テリー伊藤さんのお笑いに懸けた熱量に、
” ・「お約束」という演出を発案した。
・お笑いドキュメントとも言える演出を考案した。
・言葉のリズムと会話の臨場感を優先させるために、編集のつなぎの違和感をあえて無視した。”(p5抜粋)
等々、今日のTVで隆盛を誇るバラエティ番組に数々の基準を確立したディレクターの果敢なる半生記でありました〜