先月(2020年1月)に続いて下北沢にある本屋B&Bを訪れ、
今回は「バンクシー 無名時代から現在地まで」と題されたトークイベントへ。
登壇は月初に読了していた『バンクシー アート・テロリスト』著者の毛利嘉孝教授と、
バンクシーに直接取材された経験をお持ちのライター、翻訳などを手掛けられている鈴木沓子さん。
もともと本イベントへの参加を決めていて、『バンクシー アート・テロリスト』を手に取っていた経緯でしたが、
話題は、まずお二人が出会われた頃のお話しで、鈴木沓子さんがバンクシーに取材出来たものの
掲載出来る媒体がなく、イギリス滞在中に知り合っていた毛利嘉孝教授の伝手でSTUDIO VOICEに掲載されるに至ったそうな。
続いて『バンクシー アート・テロリスト』を書かれた経緯について話題が及び・・
(長くその場にあったものの)突如、日の出駅付近で話題となったバンクシー作と思われるネズミのグラフィティを小池百合子東京都知事が取り上げたことで
登壇のお二人に取材が殺到。作品の真贋を問うものと、値段に関する質問が集中。
バンクシーはおろかストリートアートに関して、全く理解されていない状況を知らしめられ、
毛利嘉孝教授が本を書く着想を得て、鈴木沓子さん等の協力を得ながら上梓に至ったとのこと。
バンクシー台頭の背景
そこから、お二人ともイギリスの滞在歴があることからバンクシーが脚光を浴びる背景について話題が転じ
1990年代、トニー・ブレアー率いる労働党政権が誕生した際は、新しいことが始まる期待感からイギリス国内が明るかったものの
やがて2000年に入り暗くなりゆく中でバンクシーが台頭してきたと。
違法なのだけれどもグラフィティが力を持っていったイギリス国内に対して、ストリート(活動)全般、許容度の低い日本で素地が全く異なることや
件のネズミの扱いに関してもまったく心得ていない小池都知事に対して、毛利嘉孝教授に鈴木沓子さんが声を挙げられたものの成果には至らず、よりバンクシーの存在を謎めかせてしまっている様子。
休憩を挟んでの後半はバンクシー特集を組んだ Casa BRUTUSの西尾陽一編集長が加わり、
同誌の取材で、鈴木沓子さんがパレスチナにあるバンクシーが手掛けた「世界一眺めの悪いホテル(THE WALLED OFF HOTEL)」滞在時のエピソードや
バンクシーとは不可分な出身地ブリストルについて、バンドTHE WILD BUNCHなどご当地の文化も交えて語られ、
バンクシーを覆うヴェールの内側へ掘り下げられていきました。
Banksy 360°
最後、質疑応答を含め全体で約2時間。
シュレッダー事件に絡めバンクシーがストリートでアートを(無料で)描き続けてきたことの意味や
Shredding the Girl and Ballon – The Director’s half cut
ブリストルという街に根付いたバンクシーの存在について話題が及んだ部分が印象に残りましたが、
バンクシーというアーティストを切り取るのではなく、作品が描かれた場所、当時の社会など、もろもろ複合的に作品を捉えることで
正体不明とされるアーティストの素顔、脳内に迫っていけることが分かり、とっかかりを得られたことで、バンクシーへの興味をより深められたトークイベントとなりました ^^