脳科学者としてTV番組などで活躍されている中野信子さんの『科学がつきとめた「運のいい人」』を読了。
第2章まで読んだところで中間記⤵︎ をまとめているので、
今回は第3章から第5章に書かれてある内容を対象にします。
脳は他人思いを喜ぶ
まずは中間記で自分を大事にすることの重要性について紹介しましたが、今回は他者との向き合い方から。
” どれだけ他人のために生きられるか。自分の利益はひとまず脇に置いておいて、他人の利益になるような行動、いわゆる利他行動をどれだけとれるか。
これによってその人の運の良さは大きく左右される、といえそうです。
というのは、利他行動をとることで、人の脳にはよいことがたくさん起きるのです。
・・中略・・
人の脳は、ほめられたり、他者からよい評価を受けると、現金を受け取ったときと同じような喜びを感じるのです。
・・中略・・
ところで、利他行動は常にだれかからほめられたり、よい評価を受けるとは限りませんね。人知れずに行動する場合も少なくありません。
自分以外のだれかのための行動は、たとえだれにも見られていなくても、自分自身は見ています。
人の脳には、内側前頭前野という自分の行動を評価する部位があります。
この部位が、「よくやった!」「すばらしい!」などと自分の行動を評価すると、たとえ他人からほめられてなくても、大きな快感を得られるのです。”(61-62%、百分率は電子書籍のページ数、以下同様)
このことに関連して、本の最後部で祈りの効用に関しても言及されていて
” 具体的な努力や工夫はひとまず置いておいて、とにかく祈る。・・中略・・
祈ることは、心と体の健康にプラスに働く、ひいては運の向上につながる場合があるからです。
では、どんな祈りが心と体にプラスに働くのでしょうか。
それは、自分のことだけではなく、自分以外のだれかの幸福も願うポジティブな祈りです。
・・中略・・
先に、「人間の脳には前頭前野内側部と呼ばれる部分があり、ここは自分の行動の評価を行っています」と書きましたが、
祈りの内容についても脳はよしあしのジャッジを下しています。
自分のことだけを考えた祈りよりも、自分以外のだれかの幸福も願った祈りのほうが「よい祈りだ!」と脳が判断するのはいうまでもありません。
・・中略・・
脳が「よい祈り」と判断すると、ベータエンドルフィンやドーパミン、オキシトシンなどの脳内快感物質(脳内で機能する神経伝達物質のうち、多幸感や快感をもたらす物質を一般的に総称した用語)が脳内に分泌されます。
なかでもベータエンドルフィンは、脳を活性化させる働きがあり、体の免疫力を高めてさまざまな病気を予防します。
さらに、ベータエンドルフィンが分泌されると、記憶力が高まり、集中力が増すことも知られています。
また、オキシトシンにも記憶力を高める作用があるといわれています。
ちなみに、脳が「悪い祈り」と判断した場合には、ストレス物質であるコルチゾールという物質が分泌されます。
コルチゾールは生体に必須のホルモンですが、脳内で過剰に分泌されると、脳の「記憶」の回路で中心的な役割を担う「海馬」という部位が萎縮してしまうことがわかっています。
このように、「よい祈り」は心と体の健康にプラスに働き、「悪い祈り」はマイナスに働くのです。”(88-90%)
ここでポイントに感じたのは、自分と同じく他者を思いやることの大事さとともに
” 自分以外のだれかのための行動は、たとえだれにも見られていなくても、自分自身は見ています。”
の箇所。
自分自身の行動を自分自身で判断して、それに応じた脳内物質が分泌されるメカニズムが頭にインプットされると、
誰も見ていない、自分一人だからの状況にこそ、その人の真骨頂が発揮されるように思い、
ここに運の善し悪しを別つ源といった、すべての根幹があるかのポイントとして捉えました。
なお、中野信子さんは「祈り」にフォーカスした著書も上梓されている模様。
運のいい人は諦めない
” ゲームをおりないこと ーーー 。運がいい人はここを徹底しています。
私たちは生きていく上であらゆるゲームに参戦している、といえます。わかりやすい例でいえば、受験や就職活動という名のゲーム。
結婚し、家庭生活を送ることもひとつのゲームといえます。離婚し、家族が解散してしまえば、家族という名のゲームはゲームオーバーです。働くことをやめたら、仕事という名のゲームは終了。
このように、私たちはいくつものゲームに同時に参戦していますが、運がいい人というのは、自分が「これぞ」と思っているゲームからはけっして自分からはおりないのです。
「これぞ」というのは、自分なりの「しあわせのものさし」で測った夢や目的に関するゲームのこと。
・・中略・・
とてもシンプルなことですが、運のいい人は皆、ゲームを簡単にあきらめないのです。
・・中略・・
ゲームをおりないようにするには、「ゲームは常にランダムウォークモデルのように進む」と考えるのがコツです。
コインを投げたとき、表が出る確率と裏が出る確率はともに2分の1ですね。それをグラフにすることをイメージしてみましょう。
たとえば1万回コインを投げたとき、表が出たらプラス1、裏が出たらマイナス1と進んでいくように点をプロットしていくといった調子です。
さて、いったいこの点はどんな動きをするでしょうか?
大半の人は、ゼロを中心とした狭い範囲を行ったりきたりする、とイメージしがちです。
しかし、これは正しいモデルではありません。
マイナス1万からプラス1万までの広い範囲を点を動く可能性があるので、ゼロを中心とした範囲に点がとどまる確率はごくわずかなのです。
・・中略・・これがランダムウォークモデルです。
実際にコインを投げてみると、プラス200〜300、あるいはマイナス200〜300に落ち着く形になる場合が多くなります。
これを現実の夢や目的への道のりと考えてみましょう。
マイナス方向は、夢や目的の実現に向けてマイナスの出来事が起きたとき、プラス方向はプラスの出来事が起きたときと考えます。
コインを投げたときと同様に、夢や目的に向かう道のりもマイナスの出来事、あるいはプラスの出来事ばかりが続く場合は少なくありません。
しかし長期的にみれば、必ずマイナスとプラスの出来事が入り込みます。結果はプラスの出来事がほぼ半分、マイナスの出来事がほぼ半分、となるのです。
運が悪い人というのは、この長期的な視点をもつことができません。なので、マイナスの出来事が続いたときにゲームをおりがちなのです。
たとえば投資やギャンブルで負けが続いたとき、最後に一発逆転を狙って持ち金をすべてつぎ込み、結局破滅してしまう人がいます。
これと同じにように、自暴自棄になって夢や目的をあきらめてしまうのです。
一方、運がいい人は、マイナスの出来事が続いても簡単にゲームからおりません。負けが続いているときには最小限の損失になるように努力し、次のチャンスに備えるのです。
運がいい人も悪い人も、長期的にみれば、プラスの出来事とマイナスの出来事はほぼ同じ割合で起きているといえます。
しかし運の悪い人はゲームを途中でおりてしまい、運のいい人は最後までゲームをあきらめません。
結果、運のいい人はさらなる運を手に入れ、運の悪い人はますまず運が悪くなってしまうのです。
つまり、運を手に入れられるかどうかは、その人がもともと持っている運のよしあしではなく、「ゲームをおりるか、おりないか」の差にすぎないのだ、ともいえるでしょう。”(77-79%)
経営コンサルタントの神田昌典さん曰く「人は螺旋状に成長する」と説明し、
或いは一般的に知られている成長曲線は下掲の如くですが
上述の内容は、別の視点で成功までのプロセスを説いたものといえ、本質を捉えた言及と感じました。
運を味方にして生きる人たち
といった具合で一冊の本を通じ、脳科学をバックボーンとした「運」を味方につける考え方、行動について様々学びました。
多くの人にとって、運は生まれ持った先天性的なものと扱いがちですが、本書でここまでブレイクダウンして説明されると、運のとらえ方も発想の転換、考え方一つということが理解でき
読者を勇気づけるという意味では、非常に頼もしい一冊であると思いました。
再読で理解の深化に加え、ちょっと下を向きかけた時などに、改めて手に取りたい一冊です。