俳優 仲野太賀さん、ディレクター上出遼平さん、写真家阿部裕介さんのネパールで世界一美しい谷と評されるランタン谷を目指した旅行記が綴られた『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st Blaze Langtang Valley』を読了。
本書出版時、X で話題になっていることにフラグが立った後に触れた

サイン本入荷情報に高速で反応し、2024年最後に手に入れた本。
New Yorkの狂乱から一路Nepalへ
本書は、
” そして私たちはそれから丸三日、眠ることも忘れて遊び続けた。妙な興奮は何度布団に潜り込んでも途切れることがなかった。ダイナーで飯を食い、自転車で街を駆け巡り、クラブで踊り狂い、カラオケで喉を嗄らし、ピザ屋に駆け込んで腹を満たした。それが悪夢のように繰り返された。熱病に冒されたようで、出口のない輪に囚われたようでもあった。ニューヨークのピザ屋は朝まで営業している。というより、朝までやっている飲食店といえばピザ屋くらいしかない。だから私たちは、連日連夜ピザを食うことになった。何度目かわからない深夜の後、何軒目かわからないクラブで向かうタクシーの中で、私たちはミッドナイト・ピッツア・クラブという名を授かった。嘘じゃなく、私たちのタクシーに衝突するようにして、その名前は私たちのもとにやって来たのだった。
さて、そんな混乱の中で、私たちはネパールに行くことを決めたらしい。”(p30-31)
とニューヨークで密な時間を過ごされた著書お三方(文は上出遼平さん)がノリをきっかけに目指されたネパール旅本。
総括として
” 何一つとして、思い通りにことは運ばなかった。それでも、ままならなかった時間こそが、私たちの旅を私たちだけのものにしてくれた気がする。”(p273)
と締め括られており、その道中は
” 入山の興奮は最初の二日した持続しない。そこから数日は苦しい日々に耐えなければならない。その後、ハイカーズハイがやってくる。歩けども歩けども疲れない。疲れ方を忘れてしまったような感覚になる。だから、興奮と麻痺の間の谷と言える入山三日目というのは朝から辛い。”(p128)
という登山あるある?あれば、
” 私たちは、道中で撮ったフリースタイルラップバトルの映像を見返した。パサンは谷で初めてのラッパーで、カトマンズではストリートのラップバトルに参加しては、谷のことをレップ(代表、代弁)していたという。
一方の仲野太賀は言わずと知れたヒップホップ系の役者でもあり、休みの日には日がな一日YouTuberでMC battleを見漁るほどの洗練されたヘッズで、マイクを持たせたら右に出る者はいないと言われている。「俺は日本のエニネム(原文ママ。エミネムの誤り)って呼ばれてるんだぜ」と声高らかにフレックスしてくることもしばしばである。”(p240)
と旅の開放感感じさせられる回想あり、三人のコンビネーションは
” 三人の慎重さを数値化すると、阿部 = 一00、上出=七0、仲野=五、というところだろうか。”(p74)
というキャラクターの組み合わせから旅が型作られていきます。

旅本というと、写真の脇に文が添えられているようなイメージありますが、本書は320ページという厚みの中、写真は4分の1程度と、文、写真とも充実しており、旅にリゾートなど快適さを求めるタイプとしては「うわぁ〜ネパール行ってみてぇ!」といった感情は刺激されなかったものの

旅の最中の(仲野太賀さん視点を除く)お互いの苛立ちなど「普段仲が良くても旅に行くとこうなるよなぁ」と、自身過去の旅行記を思い出させられるなど、記述から散見される旅だからこその体験記の充実ぶりに羨ましさ覚えた読書となりました。