大前研一著『悪魔のサイクル 2013年新装版』を読了。
大前研一さんの処女作って、どんなだろ?の好奇心
大前さんの著作は覚えているだけでも『ハイ コンセプト 新しいことを考え出す人の時代』『ロシア・ショック』『旅の極意、人生の極意』や
ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長との共著『この国を出よ』などをそこそこ読んでいるものの
名著と誉れ高い『企業参謀』(の難解さ)に躓いた自分としては、それ以来、遠ざかっており、久々の感じ。
購入の動機は朝、家を出なくてはという差し迫った状況で、「何か電車の中での読み物を」と
kindleで「何かないかな?」と物色していたところ、大前研一さんの処女作や読者レヴューに加え、300円という価格設定に惹かれて。
1970年代の日本が抱えていた課題、そして現代・・
サブタイトルに「日本人のよりかかり的思考」とあり、本の冒頭に
” この本は、日本人の「よりかかり」的なものの見方、考え方をテーマとしています ” (2%/百分率は紙の本でいうところのページ数に相当/以下同様)
と書かれ、本書を読み進める上でキーワードとなる「よりかかり」とは
” 共属集団に向う「罪」の意識が「恥」の気分であるように、共属集団に向う「孤独」感は「孤立」化の気分となる。それが「よりかかり」である。” (78%)
と、やっぱり用いられている語彙の敷居が高い ^^;A
本書で指摘されている出版当時の日本の問題点に
” 優秀な人材を集めに集め、その人材が長い物に巻かれた結果、才能が会社の方針に全部包み込まれてしまう。ブレークスルーする力、突破力がなくなったというのはそういうことなのです。” (2%)
” わが国の大学院教育の最大の欠点は、院生が教授の徒弟としていわば親分子分の関係を強いられる点にある ” (10%)
” 日本人の得意は一般に問題解法のコツに通じること。 ・・中略・・
かけがえのない青春の全生命をかけておこなわれる受験勉強という愚かな行為は、人々が生まれながらに持っている純粋直観をだいなしにし、日本人をして世界と祈り合いの悪い集団に変えてゆく。” (34%)
” 日本人は、共属情緒がそこなわれることを極端におそれる人種である ” (86%)
といった海外で高等教育を受けた後、社会に身を投じた20代後半の大前研一さんが感じた日本の問題を炙り出し、
そこに根を張るものに考察を及ぼしたり、下記のような
” 第一に学生は教授を頼りにするな。第二に社会に役に立たないような大学ならば、スキップしてしまえ。第三に自分が社会に役立たないような人間ならば、隠れて生きよ。第四に自分が自分にとって陳腐に思えたら、生きることを諦めよ。
要するに徹底した生き方をしてみたら、ということである。” (42%)
“日本人の心構えからのべてみなければなるまい。それには、初めてプールで泳いだみたときの、あおの決心を要するだろう。
沈んだらだれか助けてくれるだろうとか、このプールの底は浅いだろうとか ー そんな期待はこの際、きっぱり捨て去るべきである。” (92%)
” 要はギブできるものを持つ、ということをしかと肝に銘記しておくべきであろう。
相手がギブしすぎたと後悔しているところにいまの日本をとりまく国際的なトラブルの要因が潜んでいるのだから、
十分にギブできるものをこの国の中でじっくり育むべきであろう。” (94%)
といった提言が成されているもの。
大前研一さんの原点から感じた、今更ながらの眼力
読んでいて今更ながらに「(大前研一)凄いな」と感じたのは、本の刊行が1973年ながら「原文を重視する」という見地から
40年前の出版物ながら原文に殆ど手を加えられずに2013年に新装版として再び世に出て来たこと。
また、大前さんと言えばマッキンゼー&カンパニーのイメージが強いですが、同社入社前に綴られていた日記が下地となっていること。
大前さんのキャリアをフォローされている方は「原点」ともいうべき位置づけになる本著ですが
自分にとっては読んだばかりで余計に消化出来ていないところが多いながら、大前さんが見据える世界、未来
時の流れが積み重なっても、移ろわない本質を見抜く眼力を知らしめられたかの感覚を抱く一冊でありました。