やや間隔が空きましたが、先週末参加の佐藤優先生による京都合宿企画 「危機研究の名著『失敗の本質』を読む」のおさらい。
金曜夜(18:00)に始まり、日曜昼(12:20)に終了した講座につき、大枠程度の振り返りとなります。
開講前の受付時にワークブックを手渡され、そこには・・
問1 アジア太平洋戦争(大東亜戦争、太平洋戦争)に日本が突入した理由について述べよ。
問4 陸軍大臣板垣征四郎中将が「一個師団くらいいちいちやかましくいわないで、現地に任せたらいいじゃないか」と言った根拠について論ぜよ。
問38 サイパン島陥落の意義について述べよ。
問43 栗田艦隊が反転した経緯と理由について述べよ。
など、『失敗の本質 〜日本軍の組織論的研究』を読み、佐藤優先生が読み解いた本質を捉える上での設問が設けられており、
それに即して講座が進められていくもの。
受講生の方々の参加動機は佐藤優先生だったり、『失敗の本質』を愛読書とされている方であったり、一様ではなく。
「『失敗の本質』を読んだことをない」という方もいらして、講座の合間の昼食時、佐藤優先生がおっしゃっていたところでは
受講生のレベルを3段階ほどに分類して、それぞれを意識された進め方をされているとの仕掛けで、
自分もトピックによってついていけたり、フォロー出来なかったりという状況ながら、長時間に及んだ講座でもあり、それで良かったのであろうと。
佐藤優先生が読んだ『失敗の本質』
印象的であったのは、『失敗の本質』で導かれた結論に対して、佐藤優先生は全体的に異なる見解(限定合理性の中で合理的に行動している)を持たれている前提に、
ポイントは、例えば(上述の)問4の回答で「日本軍が独断専行を認めていた」との指摘や
『失敗の本質』では、揶揄した書かれ方をしていた「風船爆弾」(p297、298)について、
所与の条件を勘案すると「極めてインテリジェンス能力が高い」と評価されていたことなど、
おそらくこの場でないと聴けないであろう解釈、見立てが、筋の通る形で伝わってきました。
但し、全体を肯定するのではなく、特攻に対して人を育てるコストに対する意識が希薄であった点など、様々問題点の指摘もありました。
講座自体、記載内容にご興味を持たれた方は、何れ本書の書籍化が予定されているようで、
新潮社の方がお話しされているニュアンスでは、すぐということではなさそうですが、
追体験できる機会は訪れるものと思います。因みに、合宿形式の佐藤優先生の新潮講座は、今回が3回目であったそうで
先行の箱根で行われた回は、つい先日書籍化されているそうな。
双方向で伝わった佐藤優先生の講座に込めた思い
今回の合宿講座では、双方向が意識され、設問を通じての受講生のやり取りにとどまらず、
その日の講座終了時に、昼食休憩時に、都度、課題が提出され、提出した答案を添削されるという
講座全体では笑いもこぼれ、楽しく進められながらも、「学びを実生活に役立てて欲しい」との佐藤優先生の思いが伝わる講座でもありました。
また、講座全体も(講座以外に)レセプションと銘打たれた夕食時間帯に合わせた佐藤優先生はじめ受講生、新潮社の方々の懇親の機会も設けられ、
合宿形式だからこそ、そして人間性通い合う有難い構成でした。
学びが膨大に及んだ分、これからが大事と思っていますが、論点が整理されたので、間隔をあけて、また『失敗の本質』を手に取り、理解を深めていこうと思います。