人気ドラマ『相棒』をはじめ俳優として活躍されている六角精児さんの『三角でもなく 四角でもなく 六角精児』を読み始めて
半分あたりのところまで来たので、そこまでの振り返り。
内容は「週刊現代」の連載からで、先月読了した『少し金を貸してくれないか』の前作にあたるもの。
当然、『少し金を貸してくれないか』の流れを汲むというのか、
源流と云うべきか・・
月明かりで暮らす
” 実は僕も四十歳位まで、住むとこ住むとこ追い出されなかったのが不思議なほど家賃を滞納していた。
アルバイト代や芝居のギャラを貰っても、パチンコ等のギャンブルや酒代であっという間になくなってしまい、月の半分以上は極貧生活で家賃には到底手が回らない。
一ヵ月二ヵ月は当たり前、大家さんの厚意に甘えてどんどん払いが遅れて行った。
家賃が遅れると当然気まずくなりコソコソと生活するようになる。
二十代の頃、家主が一階で焼き鳥屋を営んでいたアパートの二階に住んでいた時は、店の窓から発見されないように、しゃがんで、極限まで背を丸め、膝下だけで前進して店の裏まで行き、無音で階段を上がり、やっと部屋に到達していた。
家賃を催促されると困るので、夜は電気を点けずに月明かりで生活していた事もある。
ガスはずっと止められたままで、炊飯器でお湯を沸かしてスパゲティーを茹でて塩を振り掛けて食べていた。
水道はライフラインだから止まらないと人から聞いた事があるがそれは違う。まず部屋の外にあるバルブを閉められる。
それを勝手に開けて水を使っていると今度はそのバルブに鉄のパッキンのようなものを被せられて、いよいよ生命の危機に直面するのである。”(p27-28)
といったトホホ話しがあれば、六角精児さんのキャリアの転機になったと思わしき『相棒』に関するエピソードでは・・
水谷豊氏は超人です
” ご存知の通り今や『相棒』は国民的刑事ドラマになった。しかしその期待に応える為にスタッフ、キャストが弛まぬ努力をしていることも確かだ。
十年以上続いているそのスタイルを継承しつつも観る側に飽きられてはいけないし、あまり難し過ぎてもいけない。
そのギリギリの線を毎話考える作家やプロデューサーも大変だし、その撮影を半年以上に亘ってクリアし続ける監督及びスタッフも相当キツイ。
けれどやはり一番プレッシャーが掛かるのは主役の水谷豊氏である事は間違いないだろう。
あの人は僕からすると、まるで「超人」のようだ。今年で六十歳の筈なのに身体のキレは抜群だし、常に活力に満ちている。
周りへの気遣いも決して忘れず、そしてあのセリフ憶えである。台本のセリフを、どんなに長くても、量が多くても、毎シーン、いつも完璧に憶えて来るのだ。
杉下右京は出番が多いので当然撮影に時間がかかる(とはいっても相棒スタッフの仕事は恐ろしく速いが・・・)。帰ってセリフを憶える時間は物理的にはない。
なのに現場で台本をまず開かない。いったいどうなっているのだ?
五十歳にして一行のセリフを憶えるのに苦労しがちな僕はある時、水谷氏に質問した事がある。
「あの〜、どうやってセリフを憶えてるんですかぁ?」すると「そうだねぇ、集中力を持って、自分が喋る内容や情景を頭の中でイメージして憶えてるかな」という答えが水谷氏から返って来た。”(p100-101)
自著ならではのディープ六角精児ワールドへ
などなど。ディープな世界に、みんなが聞いたいであろう話題に幅広ですが、
高田文夫さんをして「芸人よりも数倍芸人らしい」の評価は、本作でも醍醐味が伝わり、
この本(シリーズ)だからこそ味わえる六角精児ワールドに、しばし浸れることを楽しみたいと思います。