六角精児さんが綴る、高田文夫さんに「芸人よりも数倍芸人らしい」と絶賛されたその日常:『三角でもなく 四角でもなく 六角精児』読了

数日前に、中間記をアップロードした俳優の六角精児さんの『三角でも 四角でもなく 六角精児』を読了。

本書の中盤から後半にかけては・・

花粉症は地味に恐ろしい病気だ

” 以前ある舞台で、女優さんが僕に向かって芝居の肝となるシリアスな長ゼリフを語っている最中に猛烈にクシャミをしたくなった時があった。

芝居も大詰め、終わる間際の事だ。「マズイ。こんな場面でいきなりクシャミなんかしたら台無しになる」僕はちょっと動いただけでも出そうになるクシャミを、息を止めて必死に我慢した。

漸く芝居が終わり、余韻を残して照明が徐々に消えていく。

「やった。何とか耐えた。」と気持ちが緩んだ瞬間、「ハークショイ」静かで真っ暗な劇場に僕のクシャミが響き渡った。

後で演出家に怒られたのは言うまでもない。”(p124)

といったクスッと笑ってしまうような失敗談であったり、

カメよ、今夜も有り難う

自室で飼育しているとの亀に絡めて・・

” 僕は結婚と離婚を繰り返し、博打で借金をしたりしているが、結果的にそうなっているだけであって、根は小心者で神経質な奴だと思う。

なので仕事で上手く行かないとやたらクヨクヨするし、舞台の初日なんかは大変緊張するのだ。

しかしそんな時、ふと部屋の隅にいるカメに目をやると、妙に力が抜ける。

カメの表情が何だか僕に「まあいいじゃん」とか、「君が気にしている程、人は君の事を見てないよ」とか語り掛けているような気がして心の負担が少し軽くなる。

カメの存在が僕の自意識を抑制し、競争心を削ぎ落とす。ある意味、正しい中年としての人格形成をカメが担っているのだ。”(p133)

といった「六角精児の素」とも云える内側の世界に触れる内容であったり、

巻末では六角精児さんがファンであることを公言されている芥川賞作家の西村賢太さんとの特別対談で、

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(西村文学で)描かれている登場人物(北町貫多)に魅了される思い入れを熱っぽく語られておられたり、二人の生い立ちに関しての共通点であったり。

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55本に及ぶコラムに特別対談という構成で、約190ページに及ぶ六角精児さんだからこその世界観。

本作の後続となる『少し金を貸してくれないか』が世に出て2年以上シリーズ作が出版されていませんが、

出れば(出てほしいぞと)、読んでて力が抜けていくような「この(六角精児な)感じ」に浸れる時間をまた楽しみたいと思います。

 


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