俳優としての活動のほか、自身が率いる六角精児バンドとしてCDの発表などもある
六角精児さんの『週刊現代』への連載をまとめた『少し金を貸してくれないか 続・三角でもなく 四角でもなく 六角精児』を読了。
六角精児の今までと、日常
1話3ページという分量から全54話を快調に読み進めることが出来ましたが、
その内容と云うと・・
” 仕事がまったくなかった僕には、二年間程、パチンコ、パチスロしかしていなかった時期がある。
その間、芝居仲間とも殆ど連絡を取らずに、笹塚の「B」というパチンコ店に巣くっていたパチプロ達とのみ付き合っていた。
「アラセ」「山ちゃん」「鈴木雅之」(シャネルズの鈴木雅之に似ていた)、彼らと毎日朝十時に必ず店で出会い、台の釘の状態をチェックし、夜まで打って、たまにパチンコ好きのオヤジの居酒屋で呑む。
朝から晩まで、パチンコの話しかしない、考えない。ある意味、俗世を離れた、刹那的な日々であった。
・・中略・・
何も生み出さなかったパチプロ達と共に過ごした二年間。もがいても前に進めない。漂うような焦燥感と沈んでいくような快感。
まるで水の中にいるようだった。今でも僕は午前十時になると一瞬、「パチンコ屋に行かなきゃ」という、妙な感覚に襲われる時がある。”(p21、「パチプロ達と過ごした日々」)
「中略」とした箇所には、パチプロ達のその後の様子が綴られていますが、退廃的な日々へのノスタルジーに残り香であったり・・
また、別の回(「心筋梗塞と向き合う」)では・・
” 医者から処方されている薬が底を突いたので、貰いに行き、血液検査をしたら、諸々の数値がかなり悪化していた。
僕は糖尿病と高脂血栓の薬を服用しているが、糖尿の数値であるヘモグロビン Alcがググッと上がり、ついには高血圧の影も忍び寄って来たのだ。
・・中略・・
僕の場合、撮影が何時あるか分からないので、生活は常に不規則。ロケで出る弁当は、揚げ物バリバリの高カロリー。
セット撮影の時のお茶場には、団子やシュークリーム等が俵積みになっている。
打ち合わせで酒を呑む。不況で潰れそうな友人の飲み屋に金を落とすために呑む。
ざっと考えても、これらの事情と誘惑の中で生きている。完全に生活習慣を変えるためには、役者を辞めて、何処かに引っ越さなければならない。無理だ。
したがって、僕は生活習慣を改めない。
僕に出来るのは、心筋梗塞にならない事を祈りながら、時間が有る時に早足で歩くこと位である。だが、それも覚束ない。
先日、今日は長めに歩こうと思い、一時間ほど歩いたら腹が無性に減って来て、我慢出来ずに、見知らぬラーメン屋でタンメンを食べてしまった。
これではラーメンを食べに出掛けただけである。自分のしょうもなさにウンザリした。”(p124-126)
といったトホホな日常に至るまで、六角精児ワールド満載の一冊となっています。
また、浸ってみたい六角精児の世界観
先日、参加したトークショーでは、作家の西村賢太さんが、「今、本当に売れない」と
出版界の現状をこぼしておられ、本書に収録されている最新の連載が、2014年3月15日号分と
これに対して六角精児さんが(トークショーで)
「そういえば、(自分の続編も)出てないですねぇ」と返されていたシーンを思い出しましたが、
本書の前作にあたる連載の第一弾『三角でも 四角でもなく 六角精児』が
” 週刊誌に連載している僕のこのコラムを本にしたものだって、天下の講談社が誌上で何回も宣伝し、テレビで稲垣吾郎さんや壇蜜さんにアピールして貰ったにも拘わらず、発行部数の六千部を売り切るのに相当時間が掛かったのだ。”(p97)
といった経緯があったようで、その後続の本作が如何ほどの売れ行きであったのか、期待されていた程ではなかった様子ですが・・
「お父さんが嘘をついた」六角精児バンド
直近の模様、続編が刊行される日を迎えれば、また浸ってみたい禁断の六角精児ワールドでありましたー