株式会社メタップス代表取締役社長で、時間を売買できるタイムバンク(=これまで曖昧だけれども誰もが価値があると感じていたものをネットを使って可視化し、経済の原理を適用することで既存とは違うルールで運営される別の経済システム/位置 No.1941)などへの取り組みもされている佐藤航陽さんの
先月(2018年1月)参加した神田昌典先生の講演会で
ちょろっと佐藤航陽さんについて紹介されたシーンがあり、興味を持ったもの。
時代の変化を読み解く
序盤は今、世の中で起こっていること、
” 既存の経済ではマネーキャピタルを増やすことがうまい人(経営者・投資家)が大きな力を持っていましたが、これからはソーシャルキャピタルを増やすのに長けた人も大きな力を持つようになると思います。”(位置 No.1694-1702)
と、価値の変容について言及されています。なお、ソーシャルキャピタルとは、
” 個人が繋がってできている社会が持続的に良い方向に発展して行くために必要な「社会的なネットワーク」を「資産」と捉えるという考え方です。
資本主義は個人の利益の追求が全体の利益に繋がるという考え方ですが、行きすぎた利己主義は社会全体を崩壊させかねない危険性があり、その反省としてこういった概念が注目されるようになりました。”(位置 No.1694)
というもの。
大枠で
” 資本主義上のお金というものが現実世界の価値を正しく認識・評価できなくなっています。
今後は、可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わって行くことが予想できます。”(位置 No.1538)
” 社会的に価値のある取り組みは利益を出しやすくなってきている一方で、利潤のみを徹底的に追求する事業は短期的な利益を求めすぎて消費者に避けられてしまうか、
過剰競争に巻き込まれて長期的には収益を出しにくくなっているような気がします。
数十年後には「営利」と「非営利」という区別はなくなっており、活動は全て「価値」という視点から捉えられるようになっているでしょう。”(位置 No.1737)”
と、これからの流れを予測。
資本主義から「価値主義」へ
後半では、これからの指針が
” 人生の意義や目的とは欠落・欲求不満から生まれるものですが、あらゆるものが満たされた世界ではこの人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつあります。
この流れは物質的な充足から精神的な充足を求めることに熱心になっていくことは間違いありません。
これから誰もが自分の人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上がっていくことになります。
・・中略・・
今後は人生の意義や目的を他人に与えられることが経済的な価値として認識されるようになり、それを与えられる組織や人間が大きな力を持ち、社会を牽引していくことになるでしょう。”(位置 No.2077-2094)
といった具合に示され、さらに
” 人生の意義の話も踏まえて、価値主義の世界ではどんな働き方や生き方がスタンダードになっていくでしょうか。
答えは非常にシンプルで「好きなことに熱中している人ほどうまく行きやすい」世の中に変わっていきます。”(位置 No.2099)
と、時代からフィットする生き方が具体的に示されており、ページをめくる度に興味、関心を引かれる構成となっています。
好きなことに熱中できるものたちの時代
最初、本書を知ることになったのは電車内の広告で「また新しく解釈本が出ている(売れている)のか」と受け止めていましたが
然に非らず(苦笑)
世の中を捉える上で格好の一冊といえ、ところどころ理解が及ばず読みづらかったしますが、
” 専門用語などはできるだけ使わずに書くことを心がけました。ITや金融関係の人にとっては少しくどいように感じられるかもしれませんが、ご容赦ください。”(位置No. 110)
と、専門性を持っていない人たちに世の中が分かりやすく書かれた著書であることが念頭に置かれていて、
理解が及ばなかった部分は再読することなどで、「今」に対する理解を深めていければと思いました。
” 好きなことに熱中している人ほどうまく行きやすい “
とは橘玲さんの著書と重なるメッセージで、
本質を捉えた指針であろうと、私個人、大いに読み応えを実感出来る一冊でした。