前々回、読み始め記 ↓
をアップロードしていた佐藤究さんの『爆発物処理班の遭遇したスピン』を読了。
稀有な設定から激変していくストーリー
その(読み始め)後、読み進めたのは
シヴィル・ライツ
猿人マグラ
スマイルヘッズ
ボイルド・オクトパス
九三式
くぎ
の六話。
容易に全貌を捉えづらい重厚、濃厚な世界観、展開は最初の二話から変わらずも、
” シリアルキラーが制作した作品は現実にいくつも存在し、そのほとんどはアメリカの法律のおかげで流通することになった。
アメリカでは刑務所にいる囚人にも多くの自由が与えられる。家族や弁護士以外の他人 ー 取材目当てのノンフィクションライター、文通目当ての一般人のファン ー と手紙をやり取りしたり、ときには電話で話すこともできる。
彼らは刑務所内の売店で買い物をし、そろえた資材で絵を描き、そして檻の外に向けてその作品を売ることすら可能なのだ。”(p174)
と連続殺人鬼のアートコレクターとしての顔を持つ銀座の画廊経営者のもとに
“「あなた、シリアルキラーのコレクターで合ってるわよね?」彼女が口にするのは、洗練されたアメリカン・イングリッシュだ。ネイティブスピーカーの発言である。
「イエス」とわたしは答える。「キラー本人ではなく、アートの方ですが」
「売りたい作品があるの」”(p181)
かかってきた一本の電話から激変していく「スマイルヘッズ」は自分自身もコレクターであるがゆえ、背景(の一端)を理解出来、急展開から恐ろしさに支配されつつ興味深く読後感に得られる形に。
また、
” これからお読みいただくのは、そんな「フォーマー・ディテクてイヴ」の最終回を飾るはずだった原稿である。九人の元刑事が登場して終わった連載の、幻の十人目のエピソード。
そこに現れる元刑事も、ある意味では他の九人と同じように、社会の片隅で何かを育てていた。にもかかわらず、彼のエピソードを誌面に載せられなかった理由 ー それは本文をお読みいただければ、おのずと明らかになるだろう。”(p206)
という元ロサンジェルス市警察の元刑事の下を訪れての取材から発展する「ボイルド・オクトパス」などは比較的舞台、設定が頭に入りやすく、
それぞれガツンと喰らわされる衝撃のような感覚を覚えつつ、予想外に転じていくストーリーにしばし引き込まれる濃厚な読書体験を得られました。