佐藤究さんが描いた暗黒に堕ち疾走した男の軌跡:『サージウスの死神』読了

2022年を迎え最初の読了本は、小説家 佐藤究さんの『サージウスの死神』。

巻末の書評家 吉田大助さんの「解説」によると

” この一九七七年福岡県生まれの作家は、実は二七歳の時に純文学のフィールドでデビューしていた。

当時のペンネームは、佐藤憲胤。第四七回群像新人文学賞優秀作を受賞した、純文学作家としてのデビュー作が、このたび一五年越しに初めて文庫化されることになった『サージウスの死神』だ。佐藤究のルーツは、これだ。”(p210-211)

と後の2021年『テスカポリトカ』↓

<< 2021年12月19日投稿:画像は記事にリンク >> 佐藤究さんが描いた果てしなく深淵なる闇:『テスカポリトカ』読了

で、直木賞を受賞することなる佐藤究さんの記念碑的な作品。

鏡三部作と称されるシリーズの一作目

また、『テスカポリトカ』に至る三部作に名を連ねるとの作品で

” ビルの屋上に立つ影と目が合った。その日から俺は地下カジノの常連になる。

ルートレットに溺れ、賭けに負けて破滅しかけた夜、突然謎めいた蒼白い焔がゆらめき、破裂して・・・。

頭のなかに数字を飼う男が、恐るべきカネとギャンブルの暗黒を疾走する!”

と背表紙にあらすじから繰り広げられたストーリーは、

購入本に書かれていたサイン

かつての角川映画ばりのハードボイルド的に感じられたり、

” 希望はすべて消滅しなくてはならないんだ。なぜって、世界はすべての希望が消滅する地点へ進んでいるからだよ。”(p196)

といった台詞に集約されていく退廃的な様相に、

とかく重層的に感じられた『テスカポリトカ』と比較すると、話しの展開は一本に真っ直ぐ進んでいく感じも

暗黒な感じは共通していて「これが佐藤究さんの世界観かぁ」と読後ズシっとした重量感を。


Comments

comments