第165回直木賞受賞作 佐藤究さんの『テスカポリトカ』を読み始めて
I 顔と心臓
II 麻薬密売人と医師
III 斷頭台
IV 夜と風
暦にない日
と分かれているうち「I 顔と心臓」を読み終え、「II 麻薬密売人と医師」の前半に差し掛かっている(〜p190)ので、そこまでのおさらい。
読み始めの経緯は ↓
で触れていますが、立ち上がり
” 十七歳のメキシコ人少女の冒険。
牛肉を運ぶトラックの荷台にまぎれこみ、毛布にくるまって木陰で眠り、知らない州の知らないバスに乗り、ひたすら南下する。やせこけた老人が乗る牛車よりもさらにのろまな農家のトラクターを呼び止めて、むりやり乗せてもらったこともあった。
相手がどんなにやさしげな笑顔を見せてこようと、信用しない。”(p014)
という生き残りを賭けた冒険の末、日本に辿り着き、そこから彼女軸に話しが推移していくのかと思いきや
然に非ず。
重層的に深まりゆく闇
” 検死に回された死体のサイズは身長百七十六センチ、体重百二キロ。百キロを超える男が片腕で持ち上げられ、天井に頭を叩きつけられ、首の骨を折られていた。”(p064)
といった中〜後半で絡んであろう重要人物のプロフィールの差し込みであったり、
” ー 五十二年 ー
アステカ人にとってもっとも大きな暦の最後にあたる一日は、キリスト教徒の怖れる裁きの日と同じように、あるいはそれよりもさらに破壊的な深淵として待ち受けているものだった。
それは時間が尽きはてる日を意味していた。そのとき世界は死を迎える。つぎの暦、新たな五十二年間が存在し得るのかどうか、誰にもわからない。神々でさえ運命を知らない。”(p096)
と、題名に冠された「テスカポリトカ」も絡む呪術的な?展開に、
「II 麻薬密売人と医師 」に突入すると
” 自分の腎臓を売ってMDMAを買った人間がインターネットの世界には何人も実在していた。”(p179)
とインドネシア舞台に暗躍するブローカーに闇医者と、まだ全貌を描けぬ伏線が脈々と説明されており、
既に何冊分にも相当するような読解量に思えていますが、中〜後半でどのように展開され読後感で得られる感情の正体、想像できぬ感じからして楽しみです。