佐藤優さんと豊島昭彦さんが辿った友情の軌跡:『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』読了

先月末(2019年4月)に刊行記念トーク&サイン会に参加した

<< 2019年4月29日投稿:画像は記事にリンク >> 佐藤優さんと豊島昭彦さんが語った、親友が「ステージ4 膵臓がん」を宣告されたそれからの日々:『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』刊行記念 トーク&サイン会 参加記

佐藤優さんと豊島昭彦さんの共著『友情について  僕と豊島昭彦君の44年』を読了。

生きた証と、友情の証

本書は、

” 40年ぶりの再会から約5ヵ月経った10月15日の深夜、その豊島君からメールが届いた。

・・中略・・

今日は、このメールの冒頭でとても残念なお知らせをしなければなりません。

と言いますのは、5月に浦和で佐藤君にお会いした後の出来事なのですが、人間ドックの指摘で再検査を受診し、その結果、膵臓がんにがんがあることが判明しました。

・・中略・・

その後、豊島君は、がんを専門とする国立がん研究センター中央病院で診察を受けた。すい臓を原発とするがんは、肝臓だけでなく、リンパにも転移していた。

もはや手術は不可能な「ステージ4」であると診断された。現在は、抗がん剤治療を受けている。”(p4)

という(佐藤優さんの)親友を見舞った衝撃から、急遽、設けられた昼食の席で

“「(中略)がんセンターのホームページによると、すい臓がんの確定診断が出てからの生存日数の中央値は291日、1年生存率は40パーセントだ」と豊島君は言った。

「わかった。それで豊島は、何がしたい」と私はあえてビジネスライクな口調で尋ねた。

確定診断から、豊島君が私に連絡を取るまで、2ヵ月半の時間があった。

その間に豊島君は、人生の残り時間をどう使うかについて真剣に考え、その上で私に連絡をとってきたはずだ。

それだから、私はまず、豊島君の今後のシナリオについて知りたいと思った。

豊島君は、しばらく沈黙した。その後、「自分がこの世に生きた証を遺したい」と言った。

「そうか、わかった。じゃあ、一緒に本を作ろう。豊島君の人生を振り返る本だ」”(p35)

という経緯から出版されることになった著書。

もっとも、佐藤優さんの提案を受けた当初、豊島昭彦さんは

“「本と言っても、僕はたいした人生を送っていない。大学を卒業して一般企業に入社し、結婚して子どもが2人できて、2度の転職をしたけれどごく普通のサラリーマン生活を送ってきたに過ぎない。

人様に誇れるようなことは何一つしてきていないし、そんな話私の人生を本にしたって誰も興味を持って読んでくれる人などいないだろう」”(p35-36)

と疑念を抱き、それに対して佐藤優さんは

” 「そんなことはない。豊島君が生きた時代、それは僕も生きた同じ時代だけれど、この時代は高度経済成長のバブルがはじけて日本経済が衝撃的な打撃を受けた時代だった。

豊島君だって当時最も安定した業種とされていた銀行に就職したのにその銀行が潰れて。

その後に外資系のファンド会社に買収されて苦労しただろう。そういうことを書けばいいんだよ。

あの激動の時代を記録に遺し、君が窮地に陥ったときの苦労や困難をいかに乗り越えてきたかを語っておくことには、きっと大きな意味があるはずだ」”(p36)

との見方を示し、(上記)内容に沿って本書が構成されています。

二人が知り合うことになった埼玉県立浦和高等学校時代の思い出に、

佐藤優さんが昨年(2018年)上梓された『十五の夏』を絡めた述懐に

著者二人が辛酸を嘗めることになった社会人時代に、そして40年の時間を経ての再会、そしてその後の急展開に・・

刊行記念トーク&サイン会でお二人から頂戴したサイン

友情を問ふ

本書を手に取ったのは、(根治の見込みが断たれた)がん宣告を受けた人の心を去来したもの

” がんになって、残された時間が少ないということを知ったことが、かえって私の気持ちを前向きなものに変えさせてくれた。

その時間を少しでも有効に使いたい。私は、この世に私が生きた証を遺したいと思った。”(p240)

親友がそのような現実に置かれて感じたことに、

” 時間がたっても人間の性格の根幹は変わらない。親友とは付き合った時間よりも相互理解の深さで測られるものだ。”(p243)

そして現実を受けて取られた行動に、

といったことに興味を持ってのことでしたが、60歳を前にして豊島昭彦さんが直面した現実は非情なれども

佐藤優さんの尽力によって、(本書により)豊島昭彦さんの(希望に沿って)生きた証が広く知られることになるなど、巡り合わせの良さも強く伝わってきました。

置かれた状況は全く異なりますが、最近、電気グルーヴのお二人(石野卓球さん、ピエール瀧さん)についても

出典:石野卓球さんTwitter(画像はアカウントにリンク)

友情の在りようについて考えさせられ、月並みではありますが、「人生に友だち」ということを強く意識させられた著書でした。


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