東京大学元教授でフリーランスの研究者の佐藤良明さんと同じく東京大学元教授で翻訳者の柴田元幸さんの『佐藤君と柴田君の逆襲!!』を読了。
(2019年)8月にお二人が登壇されるイベント⬇︎前に、
会場の青山ブックセンター売場で、たまたま本書の前を通りかかり、
「これを買えば、お二人からサイン貰えるかな?」なんてコレクターの性が引き金となり購入していた一冊 ^^
掛け合わされ創られる世界観
帯にジョイント・エッセイ集とありますが、佐藤良明さんと柴田元幸さんのエッセーが交互に収録されており、
佐藤良明さんの
” 既得の地位に居すわって給与受給を続けていたら、若いときの失敗の愚痴と言い訳を繰り返す老人になりかねない。
人生を直線でなく、天球のように見ればいいのだ。”(p52)
と、東京大学教授を辞されるに当たっての生きざま感じさせられる一文であったり、
” いまの日本にふつつか者がもっと増えていいと思う。流行になびかず、メディアに扇動されず、まわりの空気ばかり読んでいないで、
図太く鍛えた自分を頼みに、やんちゃに世間を笑い飛ばしていく、この国にはf、フーテンの寅さんという立派なモデルがいるではないか。”(p62)
と教鞭を執られての肌感覚、エールであったり。
一方、柴田元幸さんは、
” 夢想をもう少し続けると、同期のバンドがカバーするのはなかなかやりにくいかもしれないが、
たとえばキンクスにはぜひ「タックスマン」をやってほしい。ああいう皮肉はビートルズ以上にキンクス/レイ・デイヴィスにふさわしい。”(p68)
と私と趣味が交差する部分に軽やかに言及されていたり、
” まず確認しておくが、僕の場合、翻訳するのには頭を使うか筋肉を使うか、という二者択一ではない。
運動神経も鈍く、体がほとんど言うことをきいてくれない僕にとって(僕と僕の体との関係は、「無理な割に注文ばかり細かい上司」と「無能な割にそれを誠実さで補おうなんて気はこれっぽっちもない部下」とのそれに近いと思う)”(p184)
とらしさ漂う?自虐であったり ^〜^;
専門性に、日常に・・
同僚であったという間柄か、ユーモアを交えディスったり(笑)
” 翻訳家・柴田元幸が「連れてくる」アメリカ作家は、静寂ゆえのテンションのなかで、刺激値が高まっていくような文学空間を起動する点で共通しているように思える。
オースターがそうだった。ミルハウザーがそうだ。そしてこのパワーズも。”(p144)
といったアメリカ文学を専門にされている方同士だからこそ導かれる評価であったり。
お二人の著書に触れていたり、関係性であったり、何らか接点があって手が伸びる著書と思いますが、
トピックはアメリカ文学に限定されることなく、平易ではない部分もありますが、ところどころで知的好奇心を刺激されるポイントが仕込まれていた著書でありました〜