筑波大学 進藤榮一教授と、
『永続敗戦論』↑などの著者として注目度を高めておられる白井聡さんの対談ほかを収録した
『「日米基軸」幻想 凋落する米国、追従する日本の未来』を読了。
パワーシフトが起きている最中
本書は、
序章 衰退するアメリカとトランプ政治のこれから
第1章 トランプ出現とアメリカ帝国の崩壊
第2章 「凋落するアメリカ」に従属し続ける日本の未来
第3章 戦後日本の「日米基軸」論を超えて
終章 破綻した政権と国民
という章立てで、1〜3章が(上記)お二人の対談で、序章は進藤榮一教授、終章は序章と対談を受けての白井聡さんのペンによるもの。
メッセージは明確で、
” いまや世界秩序の流れは、米国主導のパクス・アメリカーナから、中国主導のパクス・アシアーナへと変貌を遂げ始めています。”(p11)
との潮流に、
” もはや日米というのはアメリカと一緒にやっていく国ではないのだということです。
アメリカと一緒にやっていくことによって、日本の国力がつき、日本の民衆が豊かになるという時代ではもうないのです。”(p92)
という時代変化に対して、安倍晋三首相の外交姿勢が、
” いまや日本という国が、中国・北朝鮮脅威論を口実にしてアメリカの軍事戦略下に組み込まれている。
しかも日本のなかにも軍産官学複合体が生まれ、それが政治の積極的な後押しを得て、根本から強化されてきている。
その大義名分が、日米基軸論であり、日米安保論なのです。”(p102)
という指摘。
アジアの優越感と現実と
本書を読んで強く感じてきたのは、自分自身、日本より東側の北米大陸ばかり見てきて、
西側のアジアは、ときに対立に、さまざま問題が燻っていることもあり、苦手意識といったものがどうしても前面に出てきてしまい先入観なしで実態を捉えていない面は否めないなと。
白井聡さんの
” 欧米に対する劣等感と、他のアジア諸国民に対する優越感に基づくレイシズム、結局これが戦前から引き続いてずっと戦後の日本人を支えてきたのです。
その根拠が、自分たちはアジアで唯一の近代国家なのだ、近代社会なのだというものです。
それによって、アジアの隣人を遅れているね、と馬鹿にしてきたわけですが、自分たちの優位性が明らかになくなってきたので、発狂しているのです。”(p154)
との物言いも過激ですが、田村耕太郎さんの先のトークイベントでも、
日本は椅子取りゲームをしているが、世界は椅子(パイ)が増えているとの指摘に対して同様の肌感覚を持っている人は日本に少ないように思います。
風が流れる先
先の米朝会談構想が浮上して実現に至るまでの間、
東京大地塾でも、
日本外交の立て続けの失敗が指摘されていて、思ったように世界情勢の波に乗り切れていないのは現実であろうと。
今回で白井聡さんの著書は三冊目ですが、読むたびに「これで本当に大丈夫かな?」と不安が高じてきたというのが、実際のところで、
政界での議論が国家観レベルに辿りつかず、疑惑レベルに終始してしまっている現実に・・ トンネルの先の光を見出せぬ状況に重たい現実を突きつけられた読後感でした。