幾つかの書店で、そのおどろおどろしい表紙を見かけたことが、妙に印象に残り、
内容に興味を持ちネットで調べ「グリコ・森永事件(が題材)かぁ」と、程なくサイン本を入手出来る機会が訪れ ⇒ 購入。
数日前から読み始めた『罪の声』で七章あるうちの第二章まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
事件の核心に迫られる二つのアングル
新聞の年末企画で「昭和・平成の未解決事件」を担当することになった記者と、
ある出来事から、肉親が犯人では思い始めた子の視点から、世間を騒然とさせた事件の真相に迫る構成で、
序盤から様々な登場人物が描かれ、筋を追いきれているか気になりながらも
本の中で進められていくシーンに、「次、次・・」といった具合、先が展開に興味を持たされます。
本の最後の注意書きで、著者の塩田武士さんは
” 本作品はフィクションですが、モデルにした「グリコ・森永事件」の発生日時、場所、犯人グループの脅迫・挑戦状の内容、その後の事件報道について、極力史実通りに再現しました。
この戦後最大の未解決事件は「子どもを巻き込んだ事件なんだ」という強い想いから、本当にこのような人生があったかもしれない、と思える物語を書きたかったからです。”
と、刊行の経緯、想いについて言及されています。*なお、本の中で登場人物、企業名等は仮名が用いられています
私自身、この事件が、どの程度真相に迫れたのかを把握していませんが、
例えば事件の背後には仕手集団の関与があったとして・・
” 「要するに、株価が下がることを知っていれば、空売りを仕掛けられるってことですよね?」
「犯人がギンガと萬堂の両方で空売りを仕掛けたとして、いくらぐらいの儲けが出せますか?」
「それは発行株数にもよるし、用意できる元手の金額、さっき言った保証金とか証券会社への手数料とかね、これにもよる。
まぁ、派手に仕掛けてりゃ、何億かにはなったんじゃないですか」”(p88)
と仮説に状況証拠に、或いは事件の舞台となった現地に足を踏み入れ情景描写が成されるなど、
社会を揺るがした未解決事件の謎解き、真相に迫っていく醍醐味が本の序盤から実感出来ます。
全409ページに及ぶ厚みで、まだ、残すとこ約300ページと相当な量ですが、
本書の書評でしばし目にする、フィクションとノンフィクションが交差する独特の感覚を楽しみたいと思います。