白井聡さんが紐解く、この時代にこそ読むべき『資本論』の凄み:『武器としての「資本論」』読了

政治学者 白井聡さんの『武器としての「資本論」』を読了。

本書は、まずカール・マルクスが著した『資本論」に関して

“『資本論』のすごいところは、一方では国際経済、グローバルな資本主義の発展傾向というような最大限にスケールの大きい話に関わっていながら、他方で、きわめて身近な、自分の上司がイヤな態度をとるのか、というような非常にミクロなことにも関わっているところです。”(p003)

という古典ながら、今でも十分通用するという位置づけから

” なぜ毎日窮屈な服を着てぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って会社に行かなければならないのでしょうか。『資本論』はこの疑問に答えてくれます。

私たちが生活の中で直面する不条理や苦痛が、どんなメカニズムを通じて必然化されるのかを、『資本論』は鮮やかに示してくれます。”(p004)

或いは

“「ヤバかったら、とりあえず逃げ出そう」となれば、うつ病になったり、自殺してしまったりというリスクから身を遠ざけることができます。

さらには「こんなバカバカしいことをやっていられるか。ひっくり返してやれ」ということにもなってきます。

『資本論』を人々がこの世の中を生きのびるための武器として配りたい ー 本書には、そんな願いが込められているのです。”(p004)

と、今『資本論』を読むべき必然性に説かれています。

(ウェビナー参加者向けの)購入本に書かれていたサイン

但し、先月(2020年8月)開催された本書刊行記念ウェビナーで言及のあった通り、

<< 2020年8月25日投稿:画像は記事にリンク >> 白井聡さんが説く、今こそ『資本論』から学ぶべきこと:オンラインセミナー「アフターコロナに役立つ武器としての『資本論』」参加記

” 今、世の中に出ているマルクス入門、『資本論』入門といった本を読んで、このすごさが生き生きと伝わってくるものが見当たりません。”(p003-004)

原書の持つハードルの高さに入門書の質の面から、白井聡さんが立ち上がって上梓に至った経緯。

現代を切り口に読む『資本論』

(移動し)ながら読みで、書かれてあることの全体が捉えられるほど次元に至らずも

 第1章 本書はどんな『資本論』入門なのか

 第2章 資本主義社会とは?

 第3章 後腐れのない共同体外の原理「無縁」

 第4章 新自由主義が変えた人間の「魂・感性・センス」

 第5章 失われた「後ろめたさ」「誇り」「階層意識」

 第6章 「人生がつまらない」のはなぜか

 第7章 すべては資本の増殖のために

 第8章 イノベーションはなぜ人を幸せにしないのか

 第9章 現代資本主義はどう変化してきたのか

 第10章 資本主義はどのようにして始まったのか

 第11章 引きはがされる私たち

 第12章 「みんなで豊かに」はなれない時代

 第13章 はじまったものは必ず終わる

 第14章 「こんなものが食えるか!」と言えますか?

といった興味を持ちやすい見出し(章)に沿って、本編の約280ページが小分けされ、テンポ良く読み進めることが出来ます。

” とにかく剰余価値を生産できないと、資本主義は持続できないわけです。ところが次第に、剰余価値を生産する手段がなくなってきている。

そこで資本の側は、労働者に長時間労働を強いたり、人件費をカットするといった形で、無理に剰余価値を生産しようとする。

その歪みが、社会の端々に現れています。”(p172)

に、

” 儲けを増やしたい資本家は、労働者を搾り上げて、商品を大量に生産させる。そこまでは分かる。しかし問題は、大量に生産した商品を、誰が買うかです。”(p147)

と、現在我々が直面している現実に、今に焦点を合わせての解説に、興味を持った箇所の拾い読いという形でも読み応えを得ることが出来ました。


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