鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス元取締役会長が、セブン・イレブン会長、イトーヨーカ堂会長時代に上梓された『商売の原点』を読了。
本書が出版された背景を緒方知行さんの「編者解説」から抜粋すると
” 周知のように、セブン – イレブンを創業し、リーダーとして育て上げてきたのは鈴木敏文氏である。その鈴木の発案で、創業まもないころに開始されたのが、セブン – イレブン本部で毎週一回行われる「FC会議」である。この会議はすでに一三〇〇回以上を数えている。
・・中略・・
この会議に鈴木氏は可能なかぎり顔を出し、全員を前に話をするのだが、その会議の速記録は問題不出のものとして保存されている。じつは、数万ページにもおよぶその速記録をもとに単行本を講談社から発刊するという条件で、速記録のすべてに目を通すことを編者は鈴木氏から快諾いただいたのである。
・・中略・・
着手から四年。本当に長い道のりであった。結局、この企画は『商売の原点』と『商売の創造』という二編に分け、同時発売されることになった。”(p202-p205)
と、(2022年)3月に読んだ ↓
『商売の創造』と対をなす一冊。
常に心得るべき原点、そして絶えざる・・
本編では
” 品ぞろえ、鮮度管理、クリンネス(清潔)、フレンドリーサービス ー これが私どもの商売における基本四原則です。”(p15)
に
” 私たち流通業は、お客様がほしいと思っているものを見つけてきます。あるいは、自分がお客様の立場に立ったときに、これがほしいと思うようなものを仕入れてきます。
つまり、商品の質と量と価格という面で、買う側の立場に立って調達し、それを提供していくという役割をになっているわけです。”(p98-99)
といったタイトルに掲げられた基本を踏まえつつ
” いま、どういう商品がどう売れているか、お客様はどういう心理で買いにきているのかということを、徹底的に調べて把握しておく必要があります。
買い方の傾向がわかれば、そこからどういう商品がもっと売れるかという仮説も自然にわいてくるはずです。”(p102)
や
” チェーンストアはなぜ利益が上がらなくなり、経営破綻してしまったのでしょうか。
基本を忘れたために、時代の変化に対応できなくなったからです。”(p148)
など、目まぐるしく変化している消費者動向を見極めていく変化の必要性に、
当初、
” 私たちが最初にセブン – イレブンをスタートさせたときには、だれもが日本ではコンビニエンスストアは育たないと評していました。
ところが、セブン – イレブンが軌道に乗ったことを確認するや、世の人々は、「コンビニエンスストア時代の到来」と騒ぎはじめました。そして、つぎつぎにたくさんの競合店が出店しました。”(p141)
と疑問視されたところから今や圧倒的多数の国民生活に無くてはならないインフラとでもいうべき業態のトップを牽引し続けている裏側に「なるほど」「あぁ、確かに」といった2003年10月出版の書籍ながらも今も通じるモノを売る、消費者の支持を獲得(維持)する要諦が明確に言語化されている著書でありました。