橘玲さんが問う、時代に耳を澄ませるしなやかな生き様:『大震災の後で人生について語るということ』読了

橘玲さんの『大震災の後で人生について語るということ』を読了。

このところマイブームな橘玲さんではありますが、

てっきり、5月に平秀信さんの軽井沢での合宿で(橘さんの)お名前を聞いて、

7月に読了した『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』が初の橘本と思いきや

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<< 2015年7月3日投稿:画像は記事にリンク >> 橘玲さんが指南する残酷な時代を生き抜くために必要な「たったひとつの方法」とは:『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』読み始め

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<< 2015年7月9日投稿:画像は記事にリンク >> 橘玲さんが「努力しても報われていない人たち」へ贈った迫力あるメッセージ:『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』読了

先日、読了済みをの本をガサガサといじっていた際に本書を発見。「何だ、前に読んでたのかー」と。

2011年7月初版で、挟んでいたレシートの購入日付が同年8月なので、わりとすぐに買っていた事になり、

4年振りでの再読となりますが、すっかり内容が頭に入っていなかったという(苦笑)

本書は出版時、かなり話題となり、購入のきっかけは新聞の書評が決め手になっての事と思います。

本書が書かれた経緯について橘さんは

日本人としての生き方を問ふ

” この本は、私たちの世界を変えた「二つの災害」について書かれています。

ひとつはもちろん東日本大震災、もうひとつはいまから一四年前に日本を襲い、累計で一〇万人を超える死者を出した「見えない大災害」です。”(p2)

” これから本書で述べるように、私の危惧は、日本人も日本社会もますますリスクに対して脆弱になっているのではないか、ということにあります。

日本社会をいま大きな不安が覆っているとすれば、そのひとつの(そしておそらくはもっと大きな)理由は、

日本人の人生設計のリスクが管理不能になってきたからです。”(p4)

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多くの人が陥ってしまっているという伽藍の世界のポートフォリオ(p220)

橘さんの著作に共通したメッセージとして「伽藍(がらん)の世界」から「バザールの世界」へというのがありますが、

両世界の定義は・・

” 伽藍というのは、ひとの集団が物理的・心理的な空間に閉じ込められている状態で、学校のような外部から遮断された世界のことです。

それに対してバザールは開かれた空間で、店を出すのも畳むのも自由です。

伽藍とバザールでは、「評判」をめぐってまったく異なるゲームが行われています。

バザールは参加するのも出ていくのも本人の勝手ですから、相手に悪い評判を押し付けようとしてもなんの効果もありません。

悪評ばかりの業者は、さっさと廃業して、別の場所や別の名前で商売を再開すればいいだけだからです。

その一方でバザールでは、悪評と同様に、いったん退出するとよい評判もゼロにリセットされてしまいます。

よい評判は立派な「資産」ですから、それをたくさん持っている業者は、同じ場所にとどまってよい評判を増やそうと考えるでしょう。

顧客は評判のいい業者から商品やサービスを購入しようとしますから、これがいちばん合理的な戦略なのです(ネットオークションがその典型です)。

このようにしてバザール空間でのデフォルトのゲームは、できるだけ目立って、たくさんのよい評判を獲得することになります。

それに対して閉鎖的な伽藍空間では、押し付けられた悪評はずっとついて回ります。

このゲームの典型が学校のいじめで、いったん悪評の標的にされると地獄のような日々が卒業までつづくことになりますから、

できるだけ目立たず、匿名性の鎧を身にまとって悪評を避けることが生き延びる最適戦略になります。

こちらは、「ネガティブゲーム」です。”(p139-140)

また「伽藍の世界」の典型ともいえる会社員という選択に関して

” 「会社」に人的資本のすべてを預けることはきわめてハイリスクな人生設計です。

この残酷な世界を生き延びるには、伽藍を抜け出してバザールへと向かうことで、極大化した人的資本のリスクを分散しなければなりません。

しかし、もしそれができなかったら・・・。

そのときは、人的資本のリスクを金融資本でヘッジすることになります。”(p166)

このヘッジについては、本書の「7  世界市場のすすめ  金融資本を分散する」(p167〜191)で説明されており、ここでは触れません。

改めて問われる社会と交差する立ち位置

本書では題名のとおり、震災後の生き方について紙面が割かれており・・

(労働力を提供する)人的資本を生き抜いていく戦略として

” 人生設計の最適戦略はスペシャリストを目指すことになるでしょう。

アメリカでもクリエイターの数はきわめて少なく、クリエイティブクラスのほとんどはスペシャリストです(クリエイターが目立つのは、ごく少数がとてつもない成功をするからです)。”(p160)

クリエイターとは、

” 医師や弁護士、公認会計士、あるいは俳優や歌手、スポーツ選手のように、代替不可能な資格や技能、能力が必要な(だれでもできるわけではない)仕事もあります。

こうしたクリエイティブクラスに、グローバル化は多大な恩恵をもたらします。(英語を母国語とする)彼らの仕事に国家や民族は関係なく、

ひとたび成功すれば世界市場を相手に莫大な利益を手にすることができるからです。”(p145)

更に

” クリエイティブクラスのなかにも、「拡張可能な仕事」と「拡張不可能な仕事」があるといいます。

拡張可能なのがクリエイター、拡張不可能なのがスペシャリストで、この区別は、これからの仕事を考えるうえできわめて重要です。

劇団の役者よりも映画俳優のほうがはるかに大きな富を獲得できるのはなぜでしょう。

タレブはこれを、映画は拡張可能だが、演劇は拡張不可能だからだと説明します。

*(ナシーム・ニコラス・)タレブ:『ブラック・スワン』著者で文芸評論家でヘッジファンドのトレーダーでもある

どれだけ人気のある劇団でも、出演者の収入は、劇場の大きな、一年間の公演回数、観客が支払える料金などの要素によって決まってきます。

こうした要素には明らかな上限があるのですから、役者の仕事には富の限界があります。

それに対して映画は、大ヒットすれば世界じゅうの映画館で上映され、DVDで販売・レンタルされ、テレビで放映されます(拡張性がない)。

映画スターにはそのたびに利益が分配されますから、映画俳優の仕事には富の限界がありません(拡張性がある)。”(p145-146)

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変わり生くことを出来るものの強み

時期を先行して上梓された書の内容を改めて、2011年3月11日の東日本大震災を契機とした

日本人としての生き方、経済合理性を問うもの。

要は自分が好きな事、得意性を発揮できる事を如何にレバレッジ(拡張可能な形)を効かせて

労働市場に自分を投じられるかという事に集約されてくると思います。

< 再掲 >

読了を契機に一気に生き様の舵を切る事は難しくとも、古くからの(ダーウィンの言葉?)

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」

で表現されている通り、本書で問われた事に自身の解を見出し、常に変わりいく姿勢で前を見据えて生きていく事ですね。

しかし、今回も3,000字超。毎度、橘玲さんの時は力が入りますね(笑)・・

 


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