橘玲さんに学ぶ、日本人であるという事、その本質論:『(日本人)』中間記

橘玲さんの『(日本人)』が半分過ぎ(52% 善悪二元論とルール原理主義)のところまで来たので、前半の振り返り。

本書が刊行された経緯に関して

” 私たちは日本人である以前に人間(ヒト)である。人種や国籍にかかわらず、ヒトには共通の本性がある。

だとしたら「日本人性」とは、私たちから人間の本性を差し引いた後に残ったなにものかのことだ。

私たちは、自分自身を他人の目で見ることはできない。

「日本人は特別だ」という思い込みだけがあって、どのように特別なのか、その客観的な評価を意識したことがない。 ・・中略・・

国家の権威が大きく揺らいでいるいまこそ、私たち一人ひとりが、

自立した自由な個人として、正義や幸福や社会、そしてなによりも未来について考えてみるべきなのだ。” (1-2%/百分率は紙の本でいうところのページ数に相当/以下同様)

という問題提起のもと、様々な見地、引用文を用いて語られている橘玲流「日本人」論。

文章はリベラルアーツ(一般教養)領域からの落とし込みで、一度読んだだけで理解する事は(私レベルでは)難儀していますが

そのような中から印象的な記述を抜粋すると・・

人間の価値を測ることになる「愛情空間」

” 私たちが生きていくうえでもっとも大事なものは、家族や恋人などとの関係(愛情空間)だ。

愛情空間のまわりには親しい友だちとの友情空間があり、

さらにその周囲には、先輩・後輩や上司・部下を含めた「知り合い」がいる。

これが政治空間で、そこは「敵と味方」の世界でもある。

政治空間の向こうには、茫漠とした「他人の世界が広がっている。そこには、毎日挨拶する八百屋のおじさんや、

テレビの映像でしか知らないアフリカの難民などがいるが、私たちは家族や友人と比べて彼らのことをほとんど気にかけない。

とはいえ、私たちは彼らとまったく無関係に生きているわけではない。

地球は市場に覆われていて、ひとびとは貨幣を介してつながっている。

他人によって構成され、お金とモノが交換されるこの世界が貨幣空間だ。”

ここから各空間についての言及があり・・

” 愛情空間は、二人から一〇人ほどの小さな人間関係で、半径一〇メートルくらいで収まってしまう。

ところがこの小さな世界が、人生の価値の大半を占めている。

人類は太古のむかしから、愛情空間の出来事ばかり延々と語りつづけてきた。

小説でも映画でも音楽でも、猫も杓子も「愛」をテーマにしているのはこのためだ。

友情空間は、最大でも二、三〇人くらい(ふつうは一〇人前後)、半径一〇〇メートルほどの人間関係だ。

政治空間まで範囲を広げても、登場人物は一〇〇人くらいしかならない(年賀状の枚数とだいたい同じだ)。

一方、貨幣空間はお金を媒介にして誰とでもつながるから、原理的にその範囲は無限大だ。

仮に宇宙人が地球を訪れて交易を始めることになれば、貨幣空間は全宇宙に広がっていくだろう。

ところがこの広大さと比べて、私たちの人生における貨幣空間の価値はきわめて小さい。

愛情空間の重さが人生の八〇パーセントを占めるとすれば、貨幣空間は一パーセント程度の比重しかない(残り一九パーセントが友情空間だ)。

このように愛情空間、友情空間、貨幣空間には、その大きさと価値が指数関数的に逆転している。(図5)” (10-11%)

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政治空間と貨幣空間の概念図(図5)

という日本人論に落とし込まれる前の高次元での共通理解の形成や

「深いなぁ」と橘玲さんの真骨頂ともいえる経済合理性と人間性が交差した考察では・・

表面、周囲に惑わされる事なき、一つ向こう側への思考力

” 大震災後、被災地ではじめてスーパーマーケットが店を開けたとき、キャベツには一個五〇〇円の値札が付けられていた。

それでも長い行列をつくって開店を待っていた被災者たちは、口々に「ありがとうございます」「助かります」と礼をいってそのキャベツを買っていた。

このスーパーマーケットの店主は、道徳的に正しいのだろうか。

こういた報道に接すると、私たちは反射的に、被災者から暴利をむさぼるのは許せないと反発する。

店の在庫を無料で配れとまではいわないが(実際、そのようにした店もあった)、商品の価格は震災前と同じか、

それに若干上乗せするにとどめるべきだ ー 。

しかしよく考えてみると、ことはそう簡単ではないことがわかる。

キャベツを法外な値段で売ったスーパーは、その利益で次の商品を仕入れることができる。

卸売業者は、商品が被災地でずっと高く売れるのだったら、運送費をよけいに払ってもじゅうぶんに元がとれると考えるだろう。

高い価格は商品の供給を増やし、より早く市場を正常化させる。

被災者は、最初はキャベツに高いお金を払わなければならないかもしれないが、そのことで結果として得をすることになる。

ところが善意で店の在庫を無料で配ってしまうと、利益はまったく残らないから、次の仕入れができなくなる。

そうなれば商品の供給は滞り、キャベツの値段はずっと高くなってしまうかもしれない。” (50%)

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世の中、複合的要素が絡み合っている

この部分は本で結論を得るためのステップとしての引用で、まとめとして抜き出すほどの重要度はないかもしれませんが

個人ではこのところの報道で政治と世論が乖離している状況から単一的でなく、複合的に流れを捉えようとしている自分が居て

目先の事に囚われることなく、今やっていることがどのような蓋然性の高い未来を導くのか

そのような思考(法)に興味があり、引用した次第です。

本の後半では、橘玲さんが定義する日本人論が姿を現してくるものと思い、結論とともにそのプロセスを楽しみたいと思います。

 


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