元財務官僚 高橋洋一さんと、元経産官僚 原英史さんの共著『国家の怠慢』を読了。
「原英史さんにサイン貰えるかも?」の状況から本書を入手し、結果的に高橋洋一さんからも(サイン)頂けた経緯。
本書は、
第1章 コロナで見えた統治システムの弱点
第2章 間に合っていたはずの規制改革
第3章 なぜ役人は改革を嫌がるのか
第4章 モリカケ問題と前川さん、佐川さん
第5章 毎日新聞の「スクープ」で考える報道と国会
第6章 マスコミ報道に未来はあるのか
第7章 産業が丸ごとなくなる時代に
の章立てに沿って、ご両人の官僚時代のご経験などを踏まえコロナ禍さなかのオンライン対談の模様が書籍化されたもの(出版 2020年8月)。
既得権と改革と
以下、幾つか印象に残ったところを抜粋すると・・
高橋洋一さんが、コロナ禍において声高に叫ばれた緊急時の対応について
” さっきの休校の時に所得補償してくれという話だって、緊急事態宣言をして国が何らかのカネをだせば、すっきりできちゃう。
所得の6割を面倒見ますとか言ってしまえば、結構簡単になったんじゃないかなと思いますけどね。
いつもの官僚の方、例えば財務省なんかがこういう話を嫌がるから、結果として政府の緊急事態宣言がなかなかできなかったのでしょう。
平常時だったら分かるけど、戦争をしているときに金が出るからどうのこうのなんていう話をしてはいけないんです。
・・中略・・
戦争のときに予算がどうのこうのとか、言ってられないんだけど、言うのが財務省。”(p34)
という指摘に、消費税減税の効用について説いた箇所での
” GDPがすごく減るということは、その後にすぐわかるのは、それで雇用が失われるんですよ。
だいたいGDPが何%くらい失われると雇用が何%くらい失われるというのは結構関係があって、それが一番強烈なんです。
だからどこの国でも、GDPの落ち込みを防ぐというのが原則になる。それは雇用を守るためなわけです。”(p41-42)
という明瞭なる説明。
また、今も尾を引きずっている加計問題の背景に絡み原英史さんは
” 大学の設置規制は、先ほどの抑制方針以降、それこそ既得権保護の典型で、新規参入は基本認めない一方で、いったん作られたら私学助成金を出して守り抜くという仕組みでした。
いったん入った人にとっては天国みたいな世界ができあがっていたわけです。”(p101)
と根っこを明るみにし、或いは、ご自身が甚大な被害を被った昨今の新聞報道に関して
” 昔は既得権側を規制改革側がやっつけるというときに、規制改革側の方からのリークでマスコミは書いていたんですけど、最近はそれが逆になって、既得権の側から情報をもらってやっているのかと思っただけですけどね。”(p137)
との指摘に「確かにその視点から受け止められる報道が散見されるな〜」と興味深い見解でした。
照らされた各所の闇
政治家の方々の著書は時折読んでいた感じも、官僚の方になるとパッと思い浮かぶのは元経産官僚の古賀茂明さんくらいで
日本の権力構造の内側にいた方同士の対談、リアルに本質を突いていかの納得感あり、
闇の深さを見せられた一方、対処すべき課題が鮮明となった点には(簡単ではないでしょうが)希望を感じた面もありました。