政治の世界を中心に、数多くのノンフィクション作品を出版されている大下英治先生の『決定版・田中角栄論』の第三講(最終回)。
前回 が ↓ 8月26日であったことから
約1ヶ月ぶりの開催。今回のテーマは「金脈の崩壊、ロッキード事件」など。
権力よりも重んじたこと
金脈の崩壊に関しては「いざ総理の座を・・」といった時期に、故早坂茂三さん等、側近から
「小佐野賢治、佐藤昭」との関係を断ち切って欲しいとの進言を受けたものの「この二人があって、今の自分がある」と拒否。
総理就任後、立花隆さんによって金権政治が暴かれ、児玉隆也さんによって愛人関係が暴かれ・・ 側近が懸念した状況に至った。
それまで疑惑に関して断片的な報道が成されてきていたものの、立花隆さんは集大成的に取り上げ、影響度がそれまでの比ではなく・・。
また、女性問題に関しては、娘の田中真紀子さんからの「みっともないから辞めて欲しい」という身内の意見が退陣の決定打に。
総理復帰への恩讐が招いた辞任後の展開
総理在任期間が3年に満たず、政治の世界で云う「成仏できなかった」状態から
その後は将来の復帰を見据えキングメーカーとして、政界に裏から操ることに。
自身の田中派から総理大臣を出すことなく、他派閥から起用が長く続いたため、竹下登、金丸信をはじめとする派内から突き上げにあい、
やがて派内の主導権争い、クーデター、分裂に至ることに。
大下英治先生の見立てでは、仮に総理在任期間が3年続いていれば、総理への未練も断ち切れ、違った状況になっていたであろうと。
ロッキード事件に関しては、最近、無罪論の論調などが見られるが、金銭の授受に関しては否定出来ない状況と考えられるが、
日本の法律で本件を裁けるかという点については疑義があり、調べれば調べるほど謎めいた部分があることから陰謀の構図も読み取れるとのこと。
人の為に汗を掻ける者の尊さ
以上のような話しを軸に90分+αノンストップで。印象的であったのは、昨今の政治状況に言及され、
現在、日本の政界で自民党には、自分の欲ではなく人の為に汗を掻く代議士(菅義偉、二階俊博/敬称略)は居るが
民進党には不在で、「自分が自分が・・」といった人たちばかりで、党内がバラバラで酷い状況であると。
往年の田中派には、人の為に汗を掻ける人材が豊富で、強固な組織が築かれていた、というご指摘。
人の生きざまはそれぞれながらも、昔の代議士と今の代議士で気質の違いというのか、感覚がより馴染みづらくなっているところには、大下英治先生が言われる、こうした傾向もあるのかなと。
時代を超えて人々の心に沁みていった「温もり」
6月の八重洲ブックセンターでの講演(今回の講座とは別企画)に始まり・・
4ヶ月で計4回の田中角栄論でしたが、
講義の最後、大下英治先生が言われていたのは、今も田中角栄元首相が日本人の心の中で生き続けているのは
政策が評価されたのではなく、人としての温もりが感じられたということ。
そこに本質があり、人間性に触れるエピソードが多数紹介され、ほんの少しではありますが、それまで知ることの出来なかった田中角栄元首相の実像に触れられた思いがしました。