東京ヤクルトスワローズ 高津臣吾二軍監督の『二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい』を読了。
サイン本入手機会👇に遭遇し、
購入していた一冊。
序章で
” 僕は今回、プロ野球の二軍という、人材育成の場でどんなことが考えられ、行われているのかを紹介しつつ、改めて二軍監督の仕事というものを見つめ直そうと思っている。”(p13)
と、これまで2シーズン(2017、2018)、二軍監督に就任されての振り返りに、試行錯誤に、
日ごろファンが知ることのない、二軍監督についてスポットライトが当てられた著書。
高津臣吾選手を支えた練習量
監督像も人それぞれ異なってくると思いますが、高津臣吾さんは、
” 最終的に二軍監督として僕が心がけるべきことは、いたってシンプルだと思う。選手が気分良くプレーできるかどうか。その環境を整えることを忘れないということだ。”(p14)
と定義され、具体的には
“「基本的に練習は自分でやってほしい。全体練習は1時間で終わります。それ以外のところは自分で考えて練習してもらいたい。
とにかく見せ練はなし、監督が見てる、コーチが見てるから、打撃練習でもうひと箱打っておこうとか、もう少し走っておこうとか、絶対やめてほしい。意味ないから」”(p25)
と、東京ヤクルトスワローズらしく自分で考えさせることに
” 僕は経験を信じる。プロ野球ではどれだけ練習したかが勝ち負けを分ける世界だと身をもって体験してきたからだ。”(p75)
と本文にもある通り、至ってシンプル。
一軍でチームを牽引する立場の青木宣親選手と山田哲人選手を引き合いに
” ふたりに共通しているのは、自分にはどんな練習が必要か理解していること。そして、試合では結果がどうであろうと、次のプレーに向けて切り替えが早いことだ。”(p48)
と。読んでいると、率先して練習する選手もいれば、そうでない選手もいるのだなと、それは本文でも
” 二軍を預かっていて面白いのは、おそらく一般企業と同じで、プロ野球の組織でも一生懸命頑張るヤツもいれば、サボるヤツもいるということだ。”(p82)
と明確に。
至極当然と思われる練習の重要性について、現役時代のご自身の
” 僕が後悔しているのは、とにかく「練習をこなさないと」という気持ちが支配していて、前向きな気持ちで練習していたとはいえなかったことだ。
後悔先に立たず、本当にもったいないことをした。”(p27)
という反省があってのこと。意識づけについては
” 野村監督(註:野村克也監督)は、僕のモチベーションをめちゃくちゃ上げてくれた恩人だ。僕に明確な課題を示し、そこから先は僕がシンカーに取り組むのをじっと見守ってくれた。
二軍監督をを務めるようになって、僕はこれが若い選手を教えるにあたっての「原体験」になっていると思う。”(p78)
何もこれは二軍に限った話しではないですが、二軍に限定したトピックでは
” いま、球団では毎シーズン、ドラフト上位で指名し、チームの将来を担う人材を「強化指定選手」に定めている。
強化指定選手は、球団の未来を託す選手である。とにかく成長の機会を与え、その経過を編成をはじめとしたスタッフ、そして球団のコーチが定期的にモニターしていく。
具体的なことを書くことはできないが、強化指定選手になると、先発投手ならばシーズンで特定のイニングを投げさせようとするし、打者の場合は何打席以上を確保するよう、二軍監督としてマネージメントする。”(p21)
など、本書ならではのファーム(二軍)事情に関する記述も点在し、プロ野球に関する理解度を深掘りさせてくれます。
監督像を多元化させた現役時代の指導者たち
本書は主として二軍監督の仕事、考え方についてですが、後半は高津臣吾さんのキャリアに言及された箇所もあり、
MLB挑戦を遂げたChicago Whitesox:シカゴ・ホワイトソックス時代の
” 僕はヤクルトからシカゴ・ホワイトソックスのユニフォームを着ることになったが、ここで出会った監督は、野村監督とは正反対の人物だった。
ホワイトソックスの当時の監督はオジー・ギーエンで、この人の野球をひと言で表現すれば、「お祭り野球」だった。
細かいことはまったく気にせず、とにかく選手を盛り上げまくってグラウンドに送り出す。
オジーは、何から何まで日本とは発想が真逆だった。”(p177)
に始まるオジー・ギーエン監督とのエピソードの数々は興味深く印象に残る内容でした。
結果が追求される一軍と異なり、
高津臣吾二軍監督の評価は、ご自身の記述にもある通り、これから評価されてくることになりますが、
就任中の二軍監督が出版された著書はレアであろうと、野球本を数読んできた中で、今までと違った斬り口で読み応えを感じることが出来ました。