日本総合研究所会長、多摩大学学長で、ニュース番組ほかでのコメンテーターとしてもお馴染み寺島実郎さんの『ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』を読了.-
先日参加した本書刊行記念の特別講演に合わせて入手していたもので、
講演直前に(全体の)1/4ほど、講演後に3/4ほど。
購入前は馴染みないタイトルから(読了まで)時間を要するものかと思いきや
講演で概略を把握出来ていたことに、本の内容を分かりやすく、快調なペースで最終ページまで。
定年後四〇年を生きるロードマップ
冒頭の「ジェロントロジー宣言」で
” 日本において、ついに八〇歳以上の人口が一〇〇〇万人を超した。異次元とも言うべき高齢化社会の到来を、これまでの政策科学・社会科学は予見してはいたが、
その意味を理解した社会システム・制度の再設計は活かしてこなかった。”(p10)
と問題提起があり、
” 一〇〇歳人生とは、六〇歳の定年退職から四〇年を生きねばならない現実が待っているということである。
かつて大手企業で働いていた、という思い出だけで生きていける時代でもなく、会社のOB会などでかつての仲間が集まっていれば、先が開けるという時代でもない。”(p33)
や
” 現在、典型的な四〇〜五〇代の勤労者世帯はそうした資産がないまま、子どもの教育に高額の費用がかかる時期に突入している。
このまま可処分所得が大幅に上昇に転じることがなければ、貯金などの資産を持たずに退職後の生活を迎えることになる。
一〇年前、二〇年前に定年を迎えた世代とは大きく状況が変わっているのである。”(p38)
という事実認識から
” 高齢化社会のあり方として、こうした政治のシルバー・デモクラシーのパラドックスを克服していく視点を探求することが必要であろう。
後代の負担にならない、若い世代の人たちに高齢化社会がコストとなって負担とならないような、社会システムを実現していかねばならないのである。
「高齢者の健全な形での社会参画のプラットフォームを創造することにこだわる理由が、ここにある。」”(p57-58)
と、高齢化社会の受け皿が整備されていない現状など、近未来への課題、指針、解決策(後述)が示されています。
なお「シルバー・パラッドクス」とは、
” 二〇一五年には、投票年齢が引き下げられて一八歳以上となった。しかし、すでに総人口の約三割が六五歳以上の高齢者であり、
有権者人口で考えると有権者の半分は高齢者で占められている。しかも、若者は投票に行かない傾向が今後も続き、
これからますます高齢者の割合が増えることを考えると、実に有権者の六割は高齢者になっていく。
そうなると「老人の老人による老人のための政治」という「シルバー・デモクラシーのパラドックス」が生じかねないのである。”(p52)
このような傾向が、日本に限らず、英国、アメリカ等でも見られていることについての指摘。
蓋然性高き近未来への・・
解決策の一案として、
” 私は定年後には一人一つのNPOや NGOに関わること、つまり社会的テーマに挑戦することを勧めている。
「知の再武装」には、気づきの瞬間、今までの生活とは異なる次元での人との出会いが必要なのである。”(p68)
この他、全般記述が具体的で、読み進めるほど腹落ちさせられていく感覚を得られます。
世界でも例を見ない高齢化(社会の到来)に、価値観の変化について書かれた書籍は、
大型書店でスイートスポットに陣取る時代のメインストリームともいえるトピックですが、
類書の中で、寺島実郎さんの本書を通じての提言は、データに世界各国を実際に訪問されての実感が掛け合わされ書き上げられていったもので、
私のような高齢者予備軍にとっても、これから、近未来へのアイディア、ヒントを得られる一冊であると感じられます。