寺島実郎さんに学ぶ、ネットワークを通じて見ゆる中国の本質:『大中華圏 ネットワーク型世界観から中国の本質に迫る』読了

外交をはじめとしてシンクタンク、TV等で鋭く本質に切り込まれる寺島実郎さんの『大中華圏 ネットワーク型世界観から中国の本質に迫る』を読了.-

先日参加した講演会↓で、

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寺島実郎さんが最新刊『ユニオンジャックの矢』と類似性を持った書籍とのことで紹介されたもので、

入手後、さっそく読み始め、初日に半分以上に到達するなど、読了まで興味深く拝読しました。

中国を捉える本質

本の冒頭、

” 日本人にとって、中国をどう認識するかということは常に重要なテーマである。

しかし、ここで言う中国を「中華人民共和国」とだけ考え、この国のGDP(国内総生産)が日本を追い越して世界第二位になった。

最近、軍事費が増えて巨大化しているらしい。といった視点だけでとらえていると、本質を逃してしまう。

実は中国は香港、シンガポール、台湾など中華圏の国々とネットワーク型発展の中にあって、それを凝縮して表現した言葉が「大中華圏」なのである。”(p13)

との問題提起に、本書で示される示され、論が展開されていきます。

本書が出版されたのが、2012年ということもあり、当時(から)緊迫していた尖閣問題について独立して章(第四章 尖閣問題は日米問題でもある)が設けられ、量が割かれていたことも印象的で

前段として

” 二〇一二年八月一五日から始まって、九月一五日、一八日には中国各地で異様なデモの嵐が吹き荒れた。その後、アメリカのレオン・バネッタ国防長官が中国と日本を訪れた。

その経緯で見えてきたことは、尖閣問題は日中二国間の領土問題であるという視点だけで議論していては問題の本質は見えないということである。

そこには前に触れたように大中華圏という視点が必要であると同時に、アメリカという国が重く存在していることを改めて認識させられた。”(p113)

という視座が示され、

” 常識で考えてみてほしい。尖閣諸島の問題に関しては、日本、中国のどちらにも賛成しかね、中立でありたいと言っているアメリカが、

本当に尖閣諸島で軍事衝突が起こった際に、いずれかの側に立って参戦し、自国の青年の血を流すだろうか。(以下省略)”(p119)

との洞察。更に経緯の紐解きも

” 沖縄返還協定をしっかりと読むとわかるのだが、前述のごとく返還される対象を東経・北緯の範囲を挙げ、きわめて厳密に規定している。

つまり、アメリカは日本との間にに協定を結び、これから日本が潜在主権を持っている沖縄を返還しようとしているが、

その対象となるテリトリーはここからここまであると、誰にでも共通してわかる形で明確に規定しているのである。

そして、尖閣諸島はアメリカが責任を持ってあなたにお返ししますと、日本に返還したテリトリーの中に含まれている。”(p131)

p117に掲載:「アメリカが日本に返還した領域(沖縄返還協定,1971年6月17日調印)」

端的に示され、中国(中華人民共和国)を捉える本質に、近年の日本を悩ます横たわっている問題に、

様々、考えるヒントを得ることが出来ました。

面で捉える世界、目まぐるしく変わる世界

講演時、寺島実郎さんは「ユダヤネットワーク」に関する著書に関しての構想と、それを含め本書(『大中華圏』)、『ユニオンジャックの矢』と合わせて三部作とする構想に、

本書に関しては増補改訂版とのお話しもあり、世界を視る自分なりの視点の獲得に、刻々と変わりゆく情勢に対応したアップデート版の上梓が楽しみです。

 


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