一昨年(2018年)、世田谷文学館で開催された筒井康隆展に足を運んだことを契機に
筒井作品に触れる機会が増え、
公式サイトの笑犬楼大通り内のコンテンツ:偽文士日碌(Web日記)も時折覗くようなルーティンが定着していました。
二月末に突如、御子息の筒井伸輔さんの訃報を知り、
面識はないものの同世代では有り、周囲が予期していなかったとの展開に衝撃を。
翌月、
個展「筒井伸輔展」についての続報があり、子を思う筒井康隆さんの思い伝わる内容に「これは是非行ってみたいなぁ」と。
日常から切り離されし瞬間
時節柄、感染症対策として予約制&5名限定+入館前の検温、マスク着用という形での開催。
数日前、晴れて初日の予約が取れ、会場のMIZUMA ART GALLERYを訪れれば、ほぼ貸切り状態。
どっぷりと(作品の)主の世界観に浸ることが可能となり、歩を進めていけば
一見して分かる作風の特徴に、配布用資料によるとインドネシアはジャカルタ応報時、
” インドネシアのバティック(ろうけつ梁)と自身の作品には、技法やイメージに類似点が多いことに気づいた筒井は、バディックで使用されるチャンティンという器具に注目します。
チャンティンは細い口金のついた銅製の器具で、温めたロウを入れて図柄を描きます。
これまでの筒井の作品は、モチーフが描かれた型紙をパズル状に切り分けてキャンパスに配置し、紙を一片ずつ外してロウを流し込んで画面を構成していましたが、チャンティンを使用することによって、型紙を使用する従来の工程ではなく、キャンパスの上に直接ロウで線を引くことができるようになりました。”
との説明書き。
実物を目の当たりにすると
今まで自分が観てきたアート作品、絵画とは一線が画された特徴的な作風が印象的。
作品 x 個展に賭けた思い
また、並べられた作品の中には亡くなる五日前に仕上げられたという作品に、
新たな作品に着手しようと下地だけ創られた未完成品など、
闘病中で有りながら死が予期せぬものであったと思わさせる背景も伝わり、今回の個展に賭けたであろう思いなど作品の前で立ち止まっては色々と思いを及ばされました。
変わりゆく世界
余韻に浸りながら帰宅後、本展の会期が、当初は5月2日までであったところ、MIZUMA ART GALLERYが5月6日まで休廊に入ることを知ることに。
4月8日の偽文士日碌で、開催を巡る舞台裏について読みましたが、一旦は一日開催となってしまったところタイミングが噛み合って「来ることが出来て良かったなぁ」と。
それは独特な作風と、故人の思いが伝わってくる感じが行った甲斐を実感させてくれた一方、会場に向かう数時間前 ↙️
” 今僕たちが体験しているこの状態が日常になっていくと思った方がいいと思っています “
という新型コロナウイルス感染拡大収束後の宇野常寛さんの見立てに触れ、
今回のようなアートに浸る時間(機会)を気軽に持つことが、だんだんと貴重(=難しく)なっていく現実への覚悟も求められることになるのかと、
滞在中、このところの緊張気味の状態から解き放たれていたことを実感出来た分、反動のような揺り戻しも。