10月中旬に訪れていた筒井康隆展も、残すとこあと1日というタイミングで開催された
記念対談『筒井康隆を語る』に参加。筒井康隆さんご本人とフランス文学者 松浦寿輝さんが登壇。
往復葉書での応募ということで侮っていたら、150名の定員に対して倍率6倍に達したそうで、
運良く当選することが出来、これまでイベント参加歴はあったものの
筒井康隆さんのお話しを聞くのは初めてであったことから楽しみに迎えた当日。
冒頭、世田谷文学館 菅野昭正館長から5分程度の挨拶があり、お二人が登壇。
変幻自在な作風、尽きないアイディア
最初、松浦寿輝さんが、筒井康隆さんが「何とたくさんのことをやってきた人なのだろう」と、
長いキャリアを誇る作家の方々でも時代小説なり、社会歴史小説など、カテゴリーが限定されるのに対して、筒井康隆作品は多岐に渡ることを言及。
筒井康隆さんご自身は、書き始めて60年になり、筒井康隆展で壁面にディスプレイされた数に達するのは当然のことだと。
人気作家ではあったが、流行作家ではなかったとのこれまでに、絶版になった作品が殆どなかったことは幸運な作家であったと。
松浦寿輝さんから「同じようなことはやらないのは?」との問いに、筒井康隆さんは同じことをやると指摘を受け、そのことが辛かったと述懐。
一人の人間からそれだけのアイディアが浮かんできたことについては
まず、映画の影響をされ、B級作品、C級作品をよく観て、勉強したと。
確信に至った人類の終焉
トークは1時間に及び、流れに応じて多岐に及びましたが、印象的であったのは、
最近、短編を書けなくなったのはニュースの方が小説よりも面白くなかったこと。
このことで筒井康隆さんがおぼろげであった人類の滅亡(終末)を確信するに至ったそうで、早ければ70、80年後であると。
この辺り、これまでの作品(👇など)で近未来を描き的中させてきた
ドキッとさせられる内容でしたが、終始ユーモアを交え語られ、会場の雰囲気はときに笑いが巻き起こるなどして進行。
作品の底流に流れる差別。注目される今後
筒井康隆さんの作品の根底にあるのは「差別」という指摘も印象的で、
そのことを直接的に書くことは出来ないので、形を変えて表現されていると。
差別に関しては、以前参加したトークショーで 六代目三遊亭円楽師匠も
強烈に笑いに結びついたものといった指摘をされていたことを思い出さされることになりました。
最後、松浦寿輝さんに促される形で「長編作を新たに読みたい」といった発言に
場内の賛同を得ていましたが、筒井康隆さんご自身はまったく予定がないと。
但し、当初を受け付ける形で、アイディアが作品になり得る可能性は言及され、
果たしてニュースを上回る作品(小説)が新たに我々に与えられる日が訪れるのか・・
「あっ」という間の1時間で、また、筒井康隆さんが見据えておられる近未来について、お話しをうかがいたいと思いました。