タイトルは長く承知していて、
サイン本入手機会に遭遇し、手元に引き寄せていた経緯。
お約束無しで繰り広げられるストーリー
購入前にチェックしたamanonでの本書の紹介で
>同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはる >かに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識し >つつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその >恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも >立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。
とあり、作品への興味を深めていましたが、実験的であるがゆえ頭の中でストーリーの中の情景を描いてくことが「難しかったなぁ」と。
” 妻と娘が誘拐されました。今電話をしているこのわたしは彼女たちの夫であり父である人間です。念の為に言いますと妻の夫であり娘の父です。
彼女たちがわたしの眼の前で誘拐されたのではないにかかわらず二人が誘拐されたのではないにかかわらず二人が誘拐されたことは疑いのない事実であり別べつの犯人によって誘拐されたこともまた確かなのです。”(p39)
という事件を端緒として
“「わたしには今意識がありませんのよお父さま。わたしは高校三年の娘です。小柄ではありますが思春期相応の力はありますからかどわかされそうになればそれはもちろん抵抗もいたします。」”(p36)
とテレパシー?の駆使に、表現では「空白及ぶ活字欠落のページ」も登場するなどして、
予測を行うことすら難しい結末に導かれていきます。
『虚人たち』もまた筒井康隆先生の真骨頂
表現、設定の奔放さは、これまでの筒井作品の中で十二分に感じてきたことですが、それが(小説の)手法にも拡げられた作品であろうと。
まだまだ未読の作品は多数ありながら、読後、全作品の中でも本作が代表作の一つに位置付けられていることが分かるような感覚も。