筒井康隆先生の『佇む人 リリカル短篇集』を読了。
タイトルに踊る「リリカル」の語意に馴染みなかったところ巻末の小池真理子さんによる「解説」によると
” 「リリカル短篇集」と銘打たれ、筒井さんの作品の中でも、叙情味あふれるものばかりがセレクトされている文庫 “(p356)
とのことで、昨年(2021年12月)末に読み上げていた
もう一つの短篇集のテーマは性を軸とした切り口でしたが 、
本作にはタイトルに冠された「佇む人」を含め二十篇を収録。「佇む人」など何作かは既読の作品を含みつつ
” 二十一世紀のサラリーマン生活は、二十世紀におけるそれ以上に退屈なものになっていた。
事務機械化はより高度になり、人間たちはただ、生活の目的を見失わないためにだけ、過去の、通勤という習慣を続けていたのである。”(p80-81/「ベルト・ウェーの女」)
といった筒井康隆先生らしい未来を予見したかのブラックユーモアに、
二十篇目(最後)の「母子像」は、小池真理子さんが(「解説」で)
” そして、「母子像」である。
筒井短編のベストワンを挙げなさい、と言われたら、迷うことなく私はこの作品を選ぶ。これは本当に恐ろしい、本当に悲しい、本当に不気味な、恐怖小説とも怪談ともSFとも家族小説ともつかない、まさしくあらゆるジャンルを超えた短篇小説の白眉と言っていい。”(p359)
言われるだけのズシ〜ンと読み手に刺さる設定、読後感。
全体としては叙情味というよりは、(筒井康隆先生らしい)カオス=混沌とした感覚を引っ張り出され、改めてではありますが、変幻自在な設定、展開には真骨頂を感じさせられました。