本書刊行後『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』と続く、七瀬三部作の一作目にして、筒井康隆先生最後(三回目)の直木賞候補作品。
本作の主人公 火田七瀬は
” 他人の心を読み取ることのできる能力が自分に備わっている “(p10)
という特殊能力を自覚。
” 家事手伝いという、家庭から家庭へ転転と移っても不思議に思われない唯一の職業を選ぶことで辛うじて社会から身を遠ざけ一ヵ所に落ちつくことを避けている “(p217)
家事手伝いを生業とし、タイトルの『家族八景』とは本書に収録されている八話の家族模様が描かれたもの。
表の顔とは裏腹な・・
登場する家族は
” 年齢をとったと指摘されたことは、陽子の自我にとって深い精神的外傷だった。
なぜなら彼女の自我は、彼女自身の若さと密接に結びついていたからである。
青春時代、彼女は世界の中心であり、彼女こそ青春そのものだった。つまり彼女にとって青春は、華麗な舞台の主役であり、中年はその引き立て役に過ぎなかったのである。
だから中年になった自分を認めることは、陽子にとって、自我を捨てることでもあったのだ。”(p80/青春賛歌)
に、
” 勝美はそれまで、仕事によってのみ、自分の存在を主張し正当化してきた。仕事によってのみ、社会との、そして他の人間との紐帯の存在を確信してきた。
だが、彼の退職によって、それらすべては行方を失った。”(p111/「水密桃」)
と、人生に陰であったり、表の顔とは裏腹な裏の顔を七瀬が特殊能力を使って読み解き、
前半は受け身的であったところ、中、後半はその能力を使って相手の心(行動)を動かしたり・・ といった展開で、ときに生々しい描写も含まれる激しさも特徴的。
出版年月を確認すると昭和四十七年二月。
本作(シリーズ)自体映像化されていますが、近年、TVドラマ等で人気を博した作品、シリーズの原型にもなったであろうかなと、リアリティ感じる葛藤、駆け引き等が印象に刻まれる作品でした。
『残像に口紅を』、『ロートレック荘事件』&『家族八景』で濃密な読書週間を
・・と、今週は話題再燃の ↓
に始まり、楽しみにしていたミステリー↓
に、『家族八景』を含め一挙三冊の筒井康隆先生本を読みましたが、思いのほか、各タイトル読みやすく、サクサクと読了に至ったのは少し意外にも感じられましたが、
それぞれ筒井康隆先生だからこその刺さりどころに、後味/余韻を引きづられ、濃厚な読書週間とすることが出来ました ^^