神戸女学院大学名誉教授、翻訳家、武道家などの肩書きを持つ内田樹さんの
『そのうちなんとかなるだろう」を読了。
内田樹さんのお名前は何となく頭に入っているような・・ 本も読んでいたかな・・
という状況下、最後の一冊と思われたサイン本の販売に
帯裏面の略歴にも引き寄せされ購入。
その痛快なる
タイトルからてっきり50項目程度に分けれられたエッセイ集の類かと思いきや「あとがき」に
” 今回はなんと「自叙伝」です。”(p228)
とある通り、
内田樹さんが辿った、ただならぬ、それでいて筋の通った軌跡が綴られています。それは
” 強制的に「やれ」と言われると、それだけで身体が拒絶する。そういう体質なんです。”(p15)
” 僕の「嫌だ」というのは自己決定できることではなく、身体の奥のほうから「嫌だ」という体液みたいなものが分泌されてきて、全身を満たしてしまうのです。”(p27)
そのことが
“「嫌だ」と言い出したら引かない性格だということを知っている両親も、さすがに「高校をやめる」と告げたときは、反対しました。”(p31)
となり、
エリート進学校として名が通る都立日比谷高校から一転、中卒、一人暮らし、アルバイト生活に転じるも、
経済的自立に至らず家に戻らざる得ない現実に直面、そこから大検こと大学入試資格検定合格へ向け、猛勉強の日々を過ごし
” そのままおとなしく受験勉強をすること7カ月、8月に無事に3日間にわたる大検を受験でき、10月には合格の知らせがありました。
68年の10月に同級生たちはまだ高校3年生だったわけですから、僕は高校2年で中退したにもかかわらず、同期より半年早く高校を卒業したことになります。”(p44)
と「ただならぬ」と表現した理由も伝わるものと思いますが ^^痛快さも感じられる学生時代などを経て、
これまで辿ってきた半生を
” 僕って、「人生の分岐点」がまるでない人間なんだろうということでした。
あのとき「あっちの道」に行っていたら、ずいぶん僕の人生が変わっていただろうなあ・・・ という気がさっぱりしないのです。”(p230)
と振り返られるところまで。
知 x 氣 から導かれた見解
本書を通じて、大多数の人に真似しようにも出来ない人生であることは伝わりますが、
印象に残ったのは、アカデミックな世界と武道の世界の双方に身を置かれてきたご経歴から
知力 x 身体 が掛け合わされた表現
” トラブルというのは、いなくてもいいときに、いなくてもいいところにいるせいで起きるものです。”(p196)
” 決断とか選択ということはできるだけしないほうがいいと思います。
右の道に行くか、左の道に行くか選択に悩むというのは、すでにそれまでにたくさんの選択ミスを犯してきたことの帰結です。”(p200)
といった人生訓から
” やりたくないことは、やらないほうがいい。”(p203)
なるシンプルな結論が導かれています。
引用したい部分は他でもあり、長くなるので割愛しますが、ご自身の哲学が貫かれた見事な生きざま(まわり道も必然たるプロセス)が伝わってきて、
出てくる言葉の一つ一つ、考え方が経験に基づいたもので、
サイン本というきっかけでしたが、読中から「当たり」の感覚に浸ることの出来た著書との出逢いでありました〜