小説家 渡辺浩弍さんの『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』を読了。
タイトルを長らく承知していて、サイン本販売タイミングを捉え
入手していた著書。
帯裏面に
・今や住民にも知られていないような隠し扉や隠し通路が存在する。
・建設時の設計図がない
といった但し書きがあり、
読み始め前は、てっきり中野ブロードウェイの現況に沿って繰り広げられる脱出劇と思いきや・・
” ご存じでしたか。中野ブロードウェイの存在するこの場所は、かつては乃木将軍の自宅だった。そして、この国の裏拠点として、大事な場所だったのです。”(p397)
という立地から落とし込まれた前段に、
” このビルのスペースは店のオーナーさんや住民さんがばらばらに所有していると聞きました。犯人は、その中の何人かを味方につけて、密かに工事を進めたと思います。とてつもない費用と時間をかければ、不可能なことではありません。
では、目的は何でしょう。大変な準備をして、金銭と労力を使って、何がしたかったのでしょうか。
ボクはそれは、ゲーム、だと思います。”(p324)
と本書の根幹となる設定から、話しは
” まずは中野という不思議な場所の過去について学んでもらう必要があります。特に江戸時代から現在までの歴史です。
中野とは文字通り広大な関東平野の中心の広い平坦な野原で、地表地下ともに水が豊富な場所で、もともとは農業が盛んな場所だったのです。”(p427)
と中野ブロードウェイ、物件のみにとどまらないスケールに拡大していき、先入観を覆されながら展開〜読み進めとなりました。
全685ページというボリュームで、中野ブロードウェイへの興味とは別途相応に向き合わされるパワーを求められますが、
” 彼らはさらに大胆だった。現場の全員を集めて、現場監督とは別の指示をするのだ。20坪の予定で鉄骨を組んでいるところに壁を追加して2坪と18坪に分けたり、防災上必要で確保しておいたはずのベランダスペースに柱を立てて一室を作ってしまったり。”(p274)
という先日読了した
『中野ブロードウェイ怪談』と重なる逸話が挿入していたり、合わせ読むといった楽しみ方も ^^