山田五郎さんが語ったITにもAIにも真似出来ない職人、匠の技:シンポジウム ものづくりの魅力をさぐる 参加記

Twitterでもろもろと検索していた際、山田五郎さんの登壇を知り「!」となった

出典:厚生労働省 Twitterアカウント(画像はアカウントにリンク)

シンポジウム ものづくりの魅力をさぐる」に参加。

厚生労働省委託事業とあり、いか程の人が集まるのだろうと思っていれば、

開演10分前頃の会場のUDXシアター

開演時刻が迫るにつれ、急遽、椅子が追加されるほどの人の盛況。200名に迫る数であったとか。

一般席では最も講演者に至近座席を確保。

早めに会場入りしといて良かった的な展開に、第一部は山田五郎さんの「手に職をつければ怖くない」と題されたメインスピーチ。

冒頭、世界で一番有名な日本の画家と(故)藤田嗣治さんを紹介し、日本を追われた経緯があり、

腕一本で南米、中南米、北米大陸と渡り、絵を売り歩いて日本に戻ってきた史実から、

言葉は通じなくとも技術(腕一本)さえあれば食うに困ることはないと。

ITにAIと人間の職業が無くなっていくと言われているが、オートメーション化が進んで、実際に仕事が無くなっているのは単純労働を行なっていた海外の工場で、

例えば街中にロボットが握る回転寿司店が増え、宅配寿司が増えている一方で、寿司職人が握る銀座などの高級寿司店はむしろ増えていることを指摘し、

匠の技、職人の領域よりも、むしろ侵されていくのはホワイトカラーの仕事になるであろうとのお話し。

さまざまな山田五郎さんがご出演された番組に、取材されたご経験から

人間は鈍感なところと、物凄く敏感な感覚を持ち合わせているとして、こういった感覚は機械で表面的なことは代替出来ても、人間が関与した感覚的なものは再現出来ないと断言。

講演では、さまざま事例をもとに説明づけが成されていましたが、説得力があり、約1時間に及んだ講演で納得させられました。

職人世界の内側

休憩を挟み山田五郎さんに職人のお三方と司会進行の方が加わり、「女性と『ものづくりの魅力』」と銘打たれたフリーディスカション。

印象的であったのはご主人に「ちょっと現場に入って欲しい」と頼まれ、10年の専業主婦の後、溶接工として身を立てられることになった横島敬子さんのお話しで、

フリーディスカッション後に、溶接工の横島敬子さんと

男性に囲まれた職場の中で、極力、男性の力に頼ることなく、六本木ヒルズや東京スカイツリー(地上634m付近での作業!)で、時に40kgに及ぶ鉄骨を運んだり等のお話しは職人として生きる覚悟、凄みが伝わってきました。

また、オートクチュールデザイナーの中村有希さんは幼少の頃から色や形に敏感で、

幼稚園の頃から自分のセンスに合わないものは母親であれ、美容師であれ反発されていたそうですが ^^

24歳の時から現職一本で、やがて「ものづくり日本大賞」などの賞を受賞されるまでに。

優秀な若者たちがいる中で、給与条件の良いところなどになびいしてしまい、技術を託せる人材がいない現状を憂いておられるコメントが深刻さを伴って伝わってきました。

フリーディスカションに登壇された左から中村有希さん、西川喜久さん、横島敬子さん

もうひと方の(西川精機製作所)西川喜久さんは、現状、男性中心となっている職場に関して、

女性に飛び込んで来てもらえる環境づくりを始めておられること、また、アーティストに工房を提供されている(学校を卒業すると工房が無くなってしまう)などのお話しに

時代の過渡期である現実に、山田五郎さんがしきりにおっしゃられていたことですが、

強いて言えば力仕事くらいで、職人の世界に男性も女性もないと。山田五郎さんのお話しでは時計職人でも説明出来ない技術を女性が発揮されることが海外、日本でも目立ち、

一般人が持っている先入観に、業界の閉鎖性?に、あるべき現実の過渡期にあることを思い知らされました。

ものづくり大国 日本の現在地

今回は山田五郎さんがトリガーとなって垣間見た、ものづくり、職人の世界でしたが、

技術の伝承がままならない現実に、AIとの共生が求められてくる時代に、

当日、山田五郎さんに著書に頂戴したサイン

現代人の持っている発想に、技術に、感覚に、現実に、未知の部分に光を照らされ、さまざまなことに思考を巡らされた機会となりました。


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