第69代横綱白鵬専属トレーナー 大庭大業さんの『白鵬の脳内理論 9年密着のトレーナーが明かす「超一流の流儀」』を読了。
サイン本販売現場に遭遇し、
レア感もあり、即反応していた経緯。
強さとは裏腹な内面
本書は、大庭大業さんが、
“「九州にいいトレーナーがいるから」”(p249)
との薦めから、当初は1場所限りとの約束でマッサージを引き受けたところから現在に至る付き合いに発展し、
TV画面を通じて伝わる白鵬関とは裏腹に感じられる
” 些細なことで無邪気に喜び、悲しみ、悩み、苦しむ。そこには雲の上の神様ではなく、人間的な魅力に満ち溢れた横綱の姿がありました。
そして、人間的な姿の中にこそ、横綱の強さのほんとうの理由があることに気付きました。
それは、相撲に対する姿勢です。どうすれば強くなれるか、次の取組に勝てるのかを、真摯に、妥協なく、自由な発想で、とことん考え抜き、実行しているのです。”(p7)
そして
” 横綱にとっての相撲を、自分の仕事や生活に関するあらゆること置き換えると、学ぶべきことがたくさんあったのです。
横綱ならこれをどう受け止め、何を導き出して、どう行動しただろうか。
いわば横綱の『脳内理論』を私自身にあてはめて考え、行動を変えることで、毎日が充実したものになりました。
そして、それは私だけではなく、広くたくさんの人々にも通じるに違いない。だから、皆さんに伝えたい ー それが、私がこの本を書いた動機です。”(p8)
という経緯を辿り、出版に至った著書。
以下に、印象に残った箇所の幾つかを抜粋すると・・
” もしも横綱が、自分の強さに絶対の自信を持つタイプの人だったら、おそらく1000勝も40回を超える優勝を成し遂げられなかったのではないでしょう。
「弱い」という自覚こそが、白鵬関の「強さ」の原点ともいえるのです。”(p27)
と、相撲界で傑出した実績を残しながら驕り高ぶらぬ心がけに、
” 驚くべきことに、立ち合った瞬間、横綱には相手の動きがスローモーションのようにゆっくり感じられるそうです。
だから、相手に変化されたとしてもすぐに体が反応し、体勢を立て直せるのです。
・・中略・・
人間は死に直面するなど危ないと感じた時に、目の前のことがゆっくり進むように感じられることがあります。
視覚の情報処理が普通より早く行われる可能性があることが、専門家の研究でわかっており、この現象は「タキサイキア現象」と呼ばれています。”(p91-92)
と異次元の記録を叩き出している特異性に、
また、
” 横綱にとって大鵬さんは、憧れの人でした。横綱になったばかりの頃から話を聞き、目標と定め、大きな背中を追い続けた、偉大な横綱でした。
その背中が目の前に近づいた時、ほんとうに自分が大鵬さんを超えていいのかとひるみ、怖くなったのです。
「並ぶのはうれしいけど、超えるのは怖い」とも話していました。その気持ちの奥底には、おそらく、「モンゴルから来た自分が超えていいのか」という思いもあったでしょう。”(p183-184)
と、苦悩との格闘も断続的に感じられ、
体現した強さとともに、人間味も色濃く感じられる内容となっていて、本書を読むと、相撲界に偉業を刻んだ横綱白鵬関のイメージを書き換えられること必至の著書です。