横浜DeNAベイスターズ池田純前球団社長の『空気のつくり方』を読み始めて
第1章 最下位なのに満員なのはなぜ?
第2章 顧客の空気を知る
第3章 世の中の空気を知る
第4章 組織の中に戦う空気をつくる
第5章 コミュニケーションのつくり方
第6章 センスの磨き方
と章立てされているうち、第4章まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
「空気」の正体
まず、最初の「はじめに」で、
” 空気のつくり方 ー。
それは、企業を、商品を、自身の成し遂げた仕事を、世の中に「成功」と認識してもらうための秘訣です。”(p3)
と前置きがあり、池田純さんが、横浜DeNAベイスターズ球団社長に就任されてから
連日、本拠地横浜スタジアムでは閑古鳥(=空席が目立つ状態)が鳴き、球団経営も赤字体質が常態化する中、
観客動員は・・
” 二〇一五年の平均観客者数は二万六〇四八人でした。年間稼働率は約九〇%。
ベイスターズのハマスタでのゲームは観たくてもなかなか観られない。チケットを取るのが困難な、いわゆる「プレミアムチケット化」しました。
同年にプレミアムチケット化していたといえるのは、ベイスターズのほかは、セ・パ両リーグ一二球団の中で読売ジャイアンツ、広島東洋カープ、福岡ソフトバンクホークスの三球団しかありません。
手前みそですが、この稼働率は、世界的に見てもトップクラスです。アメリカのMLB(メジャーリーグ ベースボール)は全三〇球団ありますが、
ホームスタジアムの年間稼働率が九〇%を超えているのはたった四球団しかありません(二〇一五年シーズン)。”(p18−19)
球団経営は、売上高
” 二〇一一年 五一億円(横浜ベイスターズ)
・・中略・・
二〇一五年、九三億円(横浜DeNAベイスターズ)”(p25-26)
赤字は、
” 二〇一一年 二四億円(横浜ベイスターズ)
・・中略・・
二〇一五年 三億円(横浜DeNAベイスターズ)”(p26-27)
と劇的に変化させていく中で、
そこに至る間、どういう考えが根っこにあって、どのような施策が実行されていったかが振り返られたもの。
マーケティングを実現するストーリー
本書はマーケティング関連書の意味合いを感じて手に取った経緯もありましたが、その辺りの言及も散見されますが、それよりもタイトルに絡んだ
” データをひたすら分析するだけではなく、世の中に漂う空気を嗅ぎ取り、その先の空気をつくり出すことが重要なのです。
「今、ハマスタへ行くとワクワクドキドキする何かに必ず出会えるはず!」
大袈裟な表現かもしれませんが、ファンとお客さまのこうした気持ちをつくり出すことが理想です。
コントロールできる領域は完全にコントロールし、勝敗や天気にすら左右されない「空気」をどれだけつくれるかが、スタジアムが連日連夜満員になる鍵なのです。”(p24)
また、世の中の空気を知る上で
” 世の常として、流れがあり、その一部に現在があります。流れを知らなければ、本当の今を知ることはできません。
過去や未来が存在する以上、流れや前後関係も必ず存在します。”(p113)
といったマーケティングに原的されず、ビジネスで示唆に富む記載が、散りばめられています。
横浜スタジアム、あの頃とそれから
巻末で出版時期を確認すれば、2016年8月。聞けば同年の決算では黒字化を遂げたようで(!)
何より、本書の凄みは大都市 横浜をフランチャイズとするわりには戦績、イメージともパッとせず、
(本書にも登場する表現ですが)マイナー球団の印象を拭えなかったチームのチケットが、プレミアムチケット化させた実話が当事者によって紹介されていること。
私自身、近年のプレミアムチケット化は伝聞されていたものの、かつて関西在住の阪神タイガースファンに古くから(おそらく大洋ホエールズ時代から)の横浜DeNAベイスターズファンの友人たちと年一で観戦会を開いていた際、
適度なスペースを確保でき、寛げる感の一塁(横浜)側内野席を定位置としていた頃とは隔世の感を思い知らされ、
読んで初めて知ることが多く、馴染みのあるプロ野球舞台のビジネス書といった性格から、興味深く読み進められています。後半については読了後に改めて。