養老孟司先生の『<自分>を知りたい君たちへ 読書の壁』を読了。
養老先生のサイン本ということで、
内容を確認せず購入。
てっきりタイトルから(たとえば)新社会人向けなどをターゲットにした本で、自分は対象から外れていると思いきや・・
実際は
” 私が毎日新聞に五週に一回ほどの頻度で書いていた書評を選んで本にしたいといってこられた。”(p2)
という書評集で、
1. 「見る目」が変われば世界が変わる <自然>
2. 知れば知るほど自由になる <科学>
3. 希望は自分のなかにある <社会>
4. 人生は一つの作品である < 人間 >
との章立てに沿って計59冊が取り上げられています。
本をもとに気づかされる考えるきっかけ
出だしは、養老孟司先生らしく昆虫関連の書籍が多く、「ちょっと外したかな、、」との思いを抱き
更に「さて、なぜ書評集にこのタイトル?」との思いを強くしたところで、
” いまの若者は「自分に合った仕事」を探しているらしい。そんなものはない。”(p155-156)
という一文が登場する『脱フリーター社会 大人たちにできること』を取り上げあたりから俄然、付箋貼りする箇所が増え、
” 経済性、合理性、効率性を追求してきた現代社会は、世界を一つにした。その世界では、面白いことに、人生そのものが消えてしまう。
だれがやっても、同じように同じ作物ができる。私はそういうことをして、人生を費やそうとは思いませんなあ。だって、それでは誰の人生か、よくわからなくなるからである。”(p199/『渋谷の農家』)
と考えさせられる記述に、
惜しくもアフガニスタンで凶弾に倒されてしまった中村哲医師の『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む』が取り上げられた回での
” アフガン難民を、ほとんどの人は政治難民だと思っている。タリバンのせいじゃないか。それは違う。
旱魃による難民なのである。二十五年旱魃が続き、もはや耕作不能の畑が増えた。そのための難民が、ついに百万人の規模に達した。それを放置して、個々人の医療だけにかかわっているわけに行かない。”(p229-230)
に
” 脳の中では感情の方が、いわゆる理性より安定していて、病気でも壊れにくい。感情は一時的だと思うから、不安定だと錯覚する。
でもじつは人は感情の動物であり、感情がなければ、生きるための力が欠ける。”(p251)
と本書を通じて知るに至ったことに、知的好奇心をチクチクと刺激される記述多数に及び、
読前の先入観を覆されながらも、読後相応の満足感を得ることが出来ました。