先週、中間記 ⬇︎
をアップロードした吉田豪さんの『書評の星座 吉田豪のプロレス&格闘技本メッタ斬り 1995-2004』を読了。
中、後半は感じ掴めてきたスピードアップ感に、通常版より短めの回もありましたが、内容的面白さに牽引されたような。
プロレス、格闘技界のリアル
上げ幅強かったパートを抜粋すると・・
“「リングの上の闘いはそれこそ生きるか死ぬかの迫力で臨まなければ、お客さんを惹きつけることなんかとうていできない。
お互いを罵り合って『ぶっ殺してやる』といった発言が新聞に載り、一触即発の緊張感が次にどう転ぶかわからないような意外性。
知恵を絞り、工夫を凝らし、こうした展開を必死になって考えていく。それがプロレスというビジネスなんだ」”(p414/『俺の魂』アントニオ猪木)
という根源的な話しに、
” 近頃横行しくさっている寸止めプロレス・ダンスなんかとは違い、レスリングの技術と蛇の穴(ウィガン)仕込みの関節技をベースにした上で持ち前の気の強さを全開にさせたハイリスクかつハードヒットなキッドの試合スタイルは、ハッキリ言ってシュートだのワークだのといった二元論がまったく気にならなくなるほどの素晴らしさ!
・・中略・・
「ファンのひとりがちょっと強く俺のことを叩いた。ふと、ピーターの言葉を思い出した俺はクルリと向きを変え、そいつをつかんで柵の向こう側から花道へと引きずり込んだ。」”(p428/『ピュア・ダイナマイトーダイナマイト・キッド自伝』)
と、(自分的に)初代タイガーマスクの好敵手といった枠内にとどまっていたダイナマイト・キッドのリング内外での驚嘆の規格外ぶりに、
或いは、
” 結局、普通の感覚を持ったプロレスラーが何人かかってもアントニオ猪木という一人の狂人に太刀打ちできないのと同じように、プロレス雑誌にも常識的な編集者より偏執的な変質者、強靭な精神より狂人な精神の持ち主が必要とされているのであった。”(p500/『俺たちの週刊プロレス』ベースボール・マガジン社)
という業界の特性が記された記載等々、
そもそも論に、知らなかったことの発見&学びに、これでもかという次元の情報量から、さまざま知的好奇心を刺激されました。
プロレス&格闘技 クロニクル:1995 – 2019
本書を締めくくる「おわりに 」で、前作の「はじめに」が
“「ハッキリ言えるのは、格闘技関係者でもこれだけの本をちゃんと読み続けている人は確実に存在しないはずなので、約15年間の格闘技史をかなりいびつに網羅した貴重な史料になっていること確実」と書いたが、
今回の本になったその前の約10年もあるから、四半世紀もそんなことをやっている人間は確実にボクだけ!その結果、この2冊で25年間のプロレス〜格闘技の栄枯盛衰もわかる、さらにいびつなドキュメントになっているはずなのである。”(p575)
と引用され、
偉業の一端を感じることが出来ますが、
これほど力を要して読んだ本も年数冊あるか(どうか)・・といった現実、吉田豪さんの緩急効かせつつも忖度なしに投げ込まれた豪速球が、ページ数以上の読後感ととも身体に余韻残す著作でありました〜