『黒いマヨネーズ』を読了。本書は『パピルス』『小説幻冬』の連載、『紺色のカラス』が改題され、加筆/修正されたもの。
トークの余韻を引っ張り出されながら
先週、刊行記念トーク&サイン会⬇︎に参加していたことから
烏龍パーク 橋本武志氏さんと、すゑひろがりず 南條庄助さんが泣いた話しって
“「あぁほんでな、お前何年か前に名前忘れられて怒って帰ったやろ? あれずっと言うとったわ。悪い事をした。あの子にはほんな悪い事したて」”(p020/021)
「きっと、この話し(「祖母2」)のことだろう」という感じ、本を読み進めながらイベント時のことを思い出したり、
やはり、これもその際に取り上げられた
“「橋本、人生はうなぎどんぶりやぞ」
「どういう事ですか?」
「うな丼はごはんとうなぎと山椒で成り立ってる。ごはんの部分は自分自身や。(以下省略)」”(p043「ボートレース」)
(省略の部分は、実際本書を手に取られた上でと思いますが)
予告編(トーク&サイン会)→本編という楽しみ方を出来ました ^^
本書に関して、売れている(六刷/2019年6月時点)だけあって吉田敬さんのもとに多数感想が寄せられているそうで、
「新大阪から東京に来るまでに一気に読んだ」というものには「嬉しない」と話されていて、
それは「もっと深く読んで欲しい」との思いとのことでしたが、確かに想像力というべきか妄想というべきか、
吉田敬さんの思考が色濃いシーンも頻繁に登場して、全体で58篇/p253ページというボリュームに加え、
書かれてあることも読み流せるという感じでもなく、ときに「読まされる(考えさせられる)」シーンも点在しました。
さまざまな場面で駆け巡った・・妄想の軌跡
その中で一篇お気に入りを上げると、
アルバイト先の先輩2人と競艇に行き、先輩がバカ勝ちしたことから
“「おっしゃあ!勝った!ソープ行ってすき焼き連れてったる!」”(p007)
となったものの
” 僕はタバコも吸っていたし酒も飲んだことはありましたが、基本、健全な「十七歳の地図」が好きな年頃だったのでびっくりしました。
特に『ソープ』の部分にびっくりしました。
すると、『育ち』でしょうか。敏感にその板前さんはビビっている僕を察知し、「何や吉田、嬉しそう違うのー、まさか童貞か?」”(p006/007)
という場面から、それを悟られぬよう心理的駆け引きが繰り広げられるなどの「初体験」。
最初の話しが、というインパクトもあったかと思いますが、「これが吉田敬さんの世界観かぁ」と一気に引き込まれた感あり、
生々しい性描写もあれば、売れた自分に戸惑う現実もあったり、世の流行に安易に流されないとする姿勢がうかがえたり
様々な状況で駆け巡った吉田敬さんの考えに触れることの出来たエッセイ集でした。