ロボットコミュニケーターで株式会社オリィ研究所 共同創設者 吉藤健太朗さんの
『「孤独」は消せる。』を読了。
同じ著者(吉藤オリィさん)である前回アップロードした『サイボーグ時代』は、
2019年2月の出版で、本書は2017年3月。
孤独が与えた闇と解放への軌跡
ざっくり前半から中ごろにかけては、吉藤健太朗さんが向き合ってきた孤独、ライフストーリー的なお話しで、
ロボット開発に興味を持ち、時間経過を経て師匠との出会いがあり、
” 高齢者の話を多く聴いたり、インタビューしたりしているうちにわかったのは、多くの人が「孤独」を感じているということだった。
耳が遠くなった人の悩みは、音が聞こえないことそのものではなくて、娘の声が聞き取れなくてコミュニケーションがうまくいかないことだったし、
足が不自由な人も、他の人様に迷惑をかけたくないからあまり家から出なくなったということだった。”(p139)
と吉藤健太朗さんが向き合った孤独が、社会の孤独に切り替わり、
“「死ぬまでにやりたいことは何なのか」ということだった。私が本当にしたいことは「孤独の解消」”(p149)
” 19歳まで人を避けてきたが、それでもできる限り人前で話せるようにと努力したものの、失敗の連続。
半分諦めて楽になってしまいたかったのだが、「孤独の解消」が私のテーマである。
「人と人の関係性の中に答えがある」と考えてしまった以上、苦手だからとは言ってはいられない。”(p162)
と人生のミッションが確立され、(本書で)圧巻であったのはサブタイトルにある
「私が「分身ロボット」でかなえたいこと」にリンクしてくる部分で、
” 3年半の不登校時代に自分がほしかったものは何かを考え、もうひとつの身体、「分身」をつくることを考えた。”(p195)
という経由地を経て・・
” 小児科の無菌室に長期入院している少年が対象だった。
感染を防ぐため、彼はその個室で毎日1人きりで過ごしていた。
家族もお見舞いに来るのだが、それでも1日の大半は1人ぼっちだ。
漫画やゲームなど部屋には気晴らしになるものがたくさんあるものの、本人は寂しさから無気力になっているという。
小学生以下の子どもは立ち入りが禁止されていて、兄弟とも会うことがままならなかった。
その子が使うと元気になれるのではないかと、主治医の先生が「分身ロボット」(註:OriHime)を家族に紹介してくれたのだ。
・・中略・・
彼の自宅にOriHimeを置いて、家族がいる間は常時接続、いつでも皆と会話ができるようにする。
朝になったら少年がPCを立ち上げてOriHimeのアプリを起動すると、家族側のリビングに置かれたOriHimeも起動して家族とコミュニケーションがとれる・・・。
・・中略・・
病院に分身ロボットの環境をつくって4日くらいあと、担当医から連絡があった。
「吉藤さん、分身ロボットを使っていて、私たちが塑像していた以上に、彼は楽しそうに毎日話していますよ。笑顔も増えました。・・中略・・」
人生で最も嬉しい瞬間の1つだった。”(p221-222)
と、状況の一端を想像しただけでも感動的なシーン(の幾つか)が描写されており、
自分の想像が及んでいなかった現実に、吉藤オリィさんは1987年生まれということで30歳過ぎながら
自分の内側と繋がる強さは☝️ 現代美術家辻一弘さんを彷彿とさせられる水準で、
近未来が照らされる実感に、(吉藤オリィさんの)半生が見事描かれている重み感じる一冊でありました〜