書店に立ち寄った際、ちらちら見かけ、気になっていた元読賣ジャイアンツ等で活躍したプロ野球選手の入来祐作著『用具係 入来祐作 〜僕には野球しかない〜』を読了。
一時期、ジャイアンツのエース、ローテーションの柱として活躍しながら、一転、現在は横浜DeNAベイスターズの用具係として
さぞ心理的な葛藤があった事と推察しますが、実際、その辺りの事に触れられる事、しばし。
読者向けては、そういった経緯から・・
” 世の中には、裏方になった当時の私のように、意に染まない仕事に就き、やりきれない思いで日々を過ごしている人も少なくないでしょう。
そういう方々の励みになればと思い、この本にはガッチリと、当時(プロ野球選手ではなくなってからどのように今の仕事に就き、葛藤をどうやって乗り越えていったか)の本音を詰め込んであります。” (1%/百分率は紙の本でいうところのページ数に相当/以下同様)
スポットライトを浴びる世界から縁の下の力持ちへの180°
入来さんの履歴書とも言うべきキャリアは、PL学園 ⇒ 亜細亜大学 ⇒ 本田技研。この世界を・・
” 「頑張って結果を出せば、大勢の人から称賛される世界」、そしてプロになってからは「成果に応じて驚くほどの見返りも得られる」という、ありがたい世界に生きていたのです。” (2%)
そこから
” そんな生活から一転し、今の私の仕事における成功とは何かを考えると、「丸一日、なんの問題も起きずに、滞りなく選手たちが野球に集中できた」という事実にホッとすることです。” (3%)
まず、横浜DeNAベイスターズから戦力外通告を受け、プロ野球の表舞台からの引退を余儀なくされ
” 当時の自分にとって都合のよい相手や、居心地のよかった仲間、つまり”プロ野球選手の自分をちやほやしてくれる人 “としか、つき合ってこなかったのだと思います。
少し前まで普通にしゃべっていた、仲間だと思っていた人と連絡を取ってもどこかよそよそしく、とても今後の仕事について相談できるような雰囲気ではないこともありました。” (10%)
そこから元チームメイトの桑田真澄さんから野球教室の手伝いを頼まれ
” これからの人生は謙虚に、誠実に生きなさい。新しいことを始めるときは、なおさらだ。常に周りの人への感謝を忘れないことが大事なんだ。今までと同じじゃ、いけないよ”
とのアドバイスに
” 頭をガンと殴られたようなショックを私に与え、それでいて心の隅々まで染みわたっていくような、とてつもない力を持った言葉でした。” (14%)
と、生き方の転換を強いられる事を知らしめられる事に至った。
” 桑田さんの言葉を受け、自分が何を変えなければいけないかを、じっくりと考えました。そこで出した結論は「とにかく人に感謝の気持ちを伝えよう。話しを聞いてもらったら、ちゃんと頭を下げよう」というものです。” (14%)
実際、裏方の仕事を紹介してもらうまで時間を要し、球団に
“「なにか仕事はありませんか?」と尋ね続けていました。本当は毎日でも電話したい気持ちだった ” (14%)
との事。遂に球団からバッティングピッチャーの仕事をオファーされるに至った結果について
” 恥もプライドも捨てて「何としてでも野球界に残りたい」という思いに突き動かされ、なりふり構わず自分の思いを伝え続けたのがよかったのでしょう。” (15%)
と振り返られています。それでも、
” つい先日まで、「自分のために頑張って結果を残せば、周囲の人々が認めてくれる」という世界にいた私としては、裏方の仕事に就くことに対する抵抗は確実にありました。” (16%)
という心情が本当のところであったそうな。
頭では分かっていても、変われぬ現実
肝心の仕事の方も、今までは
” 選手たちが満足してフリー打撃を終えるまで、ひたすら全身汗まみれで投げ続けることになります。現役時代のキャンプで投げ込みをしたときの疲労度など、かわいいものです。” (17%)
” 「打たれるために投げ続ける」という行為は、選手のころに「打たれないためにはどうすべきか」だけを考え続けてきたのと、まさに真逆です。これは正直、精神的にキツかった・・・・・・” (18%)
” 自己表現できないということが、ここまで精神的にキツイことなのかと思い知りました。” (18%)
と様々な葛藤に直面した様子が綴られいます。更に、最初は環境の激変についていけない状況から
” 「誰の役にも立たない人生って、なんて苦しいんだろう」” (19%)
” 春季キャンプ前の1ヵ月近くは、自分の仕事に大きなミスはないかが気になって、ほとんど眠れませんでした。寝たいのに寝られないわけではありません。
「寝たら大切なことを忘れてしまうんじゃないか」という不安で「眠りたくない」と思ってしまうのです。” (26%)
と、幾度も折れそうになる心についての記述も。
入来祐作さんに学ぶ「変われる力」
だいたい本の3割が、プロ野球選手入来祐作から裏方の世界に転じてからの苦悩、現在では
” ユニフォームを着ている人たちが、何不自由なく一日を過ごせること、彼らが野球以外のことを考えずに済むようになることが私たちの喜びなのですから。” (29%)
とまで心情の変化が至るまでの変遷が綴られています。
プロ野球ファンが「入来」と聞けば、ヤクルト・スワローズ等で活躍したお兄さん(入来智)も居ますが
多くの人が巨人軍のユニフォームをまとった姿が頭に思い浮かぶものと思います。
名の知られていない人であれば、こっそり身を転じる事も出来るわけですが、入来祐作さんの場合
その知名度が邪魔して、何をするにも目立ってしまう現実はある(あった)と思います。
そういった環境下で、現実を受け入れ、「変わろうとした努力、再起した力は見事だな」と、現役時代はファンではありませんでしたが、その姿に大いなる好感を持ちました。
本では、野球ファンなら誰もが興味あるであろうPL学園野球部、読賣ジャイアンツのベンチ裏の様子などについてもページ数が割かれているので、後日、取り上げてみたいと思います。